日本ビジネスプレスの私の連載コラム「国際激流と日本」の紹介を続けます。米中軍事交流についての報告の続きです。
こういう部分だけを見れば、米中両軍は本当に相互尊重に基づくような協力を始めて、相互の信頼を高めていくことで合意したかのようだった。
実際、日本の大手の新聞や通信はこの「米中両軍の合同演習」についてしか報道しなかった。
そこから生まれる印象は、米中両軍の接近であり、協力の強化でもあった。
鮮明に浮かび上がった3つの対立点
ところが現実には、主として中国側の陳総参謀長の発言によって、米中両軍、米中両国の間には大きな差異や対立点が厳存することが明白にされたのだった。
合同記者会見で、マレン議長を横において陳将軍は、米国への激しい非難を表明したのである。新華社通信の記者の質問に答えての米国非難だった。
その質疑応答は、中国の国営通信記者と軍部の首脳とが準備されたシナリオに従って米側に抗議や非難をうまくぶつけていく上手な演出とも見えたのだった。
新華社通信記者はその長い質問で、「中米両軍の協力が進むことは好ましいが、なお大きな障害がある」として、
(1)米国の台湾への武器売却、
(2)米軍による中国沿岸での偵察活動、
(3)米国側での中国への軍事関連技術輸出の規制
――の3点をあげた。
いずれも中国側の米側への抗議や要求である。同記者はその上で、両首脳にそれら3点への見解を求めたのだった。
この質問を受けて、陳総参謀長は以下のように発言した。
「米国は中国の軍事力増強を批判するが、そもそも誇張が多い。中国が軍事力を整備するのは、中国の一部である台湾を分裂させる策謀を阻止するためだけなのだ。台湾では李登輝(元総統)や陳水扁(前総統)のような国家分裂主義者たちが分裂を試みている。中国はその動きの阻止に照準を合わせ て、軍事能力を増強しているだけだ」(つづく)
杜父魚文庫
7965 中国軍総参謀長がアメリカを叱責した 古森義久

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