米中軍事交流の実態の報告を続けます。日本ビジネスプレスの私の連載コラム「国際激流と日本」からの転載です。
原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/9806
陳総参謀長は次のように述べた。「米国の台湾への武器売却は、台湾の分裂勢力を支援する中国の内政への干渉か、あるいは台湾を利用して中国の発展を抑えようとする覇権的な動きだ。米国が台湾への武器売却の根拠とする『台湾関係法』というのは、そもそも中国への内政干渉だ。米国が、もし台湾に再び兵器を売れば、中米軍事関係は間違いなく悪化するだろう」
「中国軍は、米軍に挑戦するほどの能力は持っていない。だから米軍による中国の軍事能力偵察は不要であり、不当なのだ。米軍は航空機と艦艇の両方を動員して偵察を続け、中国の領海や領空を侵犯することもよくあるが、ただちにこの種の軍事偵察を止めるべきだ」
「米国は西欧諸国と共に、中国への軍事関連の高度技術の輸出を不当に禁止したり、制限したりしている。中国の軍事技術は米欧諸国に比べてはるかに劣っている。だから、この禁止や制限は無意味だ」
両軍首脳は互いの要求をぶつけ合った陳総参謀長は、以上の内容を米軍のマレン統合参謀本部議長との会談ではっきり告げたことをも明言した。マレン議長も同じように、新華社通信記者が挙げた3点を、陳総参謀長が実際の会談で提起したことを認めた。
米中両軍首脳の会談では、中国側が米側に、台湾への武器売却など自国の年来の政策を放棄することを求めたのである。会談直後にスケジュールが組まれていた合同記者会見が延期されたのも、会談で対立が激しかったからだろう。
米軍の偵察に対して、中国側は勝手に「中国の排他的経済水域(EEZ)の内部やその上空では他国は軍事活動を展開してはならない」という規定を振りかざしている。米軍が中国側のEEZの上空や海域に入ることを頭から禁じようとしているのだ。
他の諸国はこうした立場を取っていない。EEZ内部を外国の軍艦や軍用機が通っても抗議はしないのである。
第3点の中国への軍事高度技術の輸出規制も、米国が自主的な判断で実施している政策だった。そのこと自体を不当だとする中国側の主張は、そもそも強引すぎるのである。
この会見では、マレン議長も陳総参謀長との会見で中国軍の透明性の欠如を指摘したことを明らかにした。(つづく)
杜父魚文庫
7973 米中両軍の対立は続く 古森義久

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