7994 WTOの論議で分かった中国風力発電の驚嘆すべき実態 宮崎正弘

過去五年で数万基という破天荒の風力発電は不正な補助金に因った。五月に黒竜江省各地で驚倒した光景とは、あちこちに風力発電。にょきにょきと林立しているのである。
山の上に風車、風車、風車!声を上げるほどに驚いた。それこそ右も左も、ちょっとした高台にも風力発電の設備が騒音をたてて回転しているではないか。
いつの間に中国はこれほどの風力発電大国となったのか。帰国して調べてみると、次の実態が分かった。2008年統計で11600基が設置され、以後も倍々ゲームで増設されている。つまり、2010年の推計で中国における風力発電設備は4万基をかるく凌駕していることになる。
風力発電メーカーの嚆矢は欧米勢だった。デンマークのヴェスタコ、米国のGEなど。後発の日本も三菱重工、富士重工、日本製鋼所などが参入した。
中国の風力発電メーカーは最後発だった。欧米から技術を導入し、さらには欧米のメーカーを買収し、独自の風力発電機械、設備をつくれるようになった。そういう悠長なペースではなく、想像を絶する迅速で事態は進捗したのだ。
国家あげてのプロジェクトと決まるや、あちこちにメーカーが乱立状態、いまや中国だけで風力発電の設備メーカーは70社もある(国有企業29社、民間23社、合弁10社、外資8社)。
そして電光石火。中国メーカーが世界ランキング上位10社のうちの4社を占める。GEを抜いて、世界二位となった「華鋭風電」(シノベル)、三位の「金風科学技術」、(独社買収し急成長)、そして原発、火力、水力発電の大手「東方電気」も参入した。
▲中国は世界一の風力発電国家にもなっていた
この結果、風力発電の容量でも中国が世界一となっていた。設置要領ランキングは(2010年度統計)次の通り
 1 中国    42・3ギガワット
 2 米国    40・4
 3 ドイツ   27・0
 以下、スペイン、インド、イタリア、フランス、英国、カナダ、デンマークの順。
日本が十傑に入らないのは、台風の通り道だからである。それでも日本には現在49ヶ所に風力発電設備があり、うち最大規模は郡山(福島県)の65900キロワット。
風力発電の費用対効果は、火力、原子力発電と比較しても非能率、非効率、非経済的と言われた。なぜなら風がなければ発電が出来ず、設備投資のコストに比べて売電コストがあまりにも安いからである。
まして豪雨、台風、強風では倒壊のおそれがあるので発電をとめる。現実に倒壊事故、鳥の巻き込み事故、ブレードの損壊など米国だけでも75件の事故が記録されている。だから日本でも各地に風力発電が盛んな時期もあったが、見直しの事態に直面する。
日本で最初に大規模なプロジェクトに挑んだのは三重県久居市(現在は津市に合併され、榊原温泉の入り口の町として知られる)だ。
市役所職員あがりの市長がきわめて熱心に関係省庁を説得し、取り付けに成功したが,装置はスェーデン製。日本製が登場するのは、それから後である。
筆者は、この久居市の現場を八年ほど前に見学したことがある。騒音がひどいのに驚いた。現在、津市の青山高原(旧久居市)の風力発電は750キロワットの設備が24基並んでいて、一万五千世帯の電力をまかなっている。
さてWTOの問題で明らかになったこと。中国は風力発電一設備あたり670万ドルから2750万ドルの「補助金」をつけてきた事実、明らかに自由競争を阻害すると米国がWTOに訴えていた係争で、中国は6日、今後補助金を停止することで合意した。
杜父魚文庫

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