いまアジアを揺るがす中国の野心的な海洋戦略の分析報告を続けます。アメリカ海軍大学校の「海洋戦略研究所」ピーター・ダットン所長のインタビューです。
古森義久が日本ビジネスプレス連載しているコラム「国際激流と日本」からの転載です。原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/11555
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ダットン まず最大の手段は軍事能力の増強だと言える。この場合の軍事能力とは、単なる海軍力だけに留まらず、広い海域での人工衛星での情報収集能力の強化、通信能力の強化、他国へのサイバー攻撃能力の強化などを含む。軍事手段で制海権を広め、他国との紛争を中国の望む形で解決できる能力を高めることだ。
第2には法的手段が挙げられる。自国の海洋での主権や領有権の野心的な拡張に法的根拠らしき主張を加えるということだ。そのためにはまず中国の国内法で海洋での特定の島々や水域の自国の領有権を拡張して規定し、その国内法を根拠にして、対外的、国際的に自国の主張の「合法性」を訴えていくという手段である。
第3は、軍事面での能力を誇示し、ある場合には実際に使い、物理的に自国の領有権の主張などを推進して、既成事実のように提示していくという手段だ。
国際合意に反する中国の主張
――中国海軍が拡大し、誇示しようとしている軍事能力は具体的にどのような内容か。
ダットン 中国海軍は当面、制海権を広め、強めるために、ミサイルシステムの強化に最大の努力を傾けている。ミ サイルは通常、地上から発射するという形が基本だが、それを海上で発射できるようにすれば、射程距離が大幅に長くなり、威力が高まる。そのためにミサイル 発射拠点としての水上艦と潜水艦の能力を高めようとするわけだ。
水上艦艇では駆逐艦やフリゲート艦の搭載ミサイル強化が進められているが、私が今、最も注視しているのは、中国海軍の「002型」高速ミサイル艦である。高スピードで航行し、ミサイルを自由に発射できるこの軍艦は小型とはいえ、米海軍にとっても大きな脅威だ。
さらに間もなく配備される空母「ワリヤーグ」の効用も注目すべきだろう。中国はこの空母を旧ソ連のウクライナから購入し、大改修を終えて、いよいよ実戦配備に就けようとしている。航空母艦というのは近隣諸国への示威効果が大きい。中国の海洋に関する主張にも威力を加えることとなろう。
――中国の海洋に関する権利の主張は国際合意に反するとされているが。(つづく)
杜父魚文庫
8038 中国の海洋戦略では空母が威力を発揮 古森義久

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