8057 北朝鮮は核兵器を放棄するはずがない 古森義久

朝鮮半島ウォッチャーでは日本でも屈指の産経新聞の黒田勝弘記者がおもしろいコラムを書いています。北朝鮮と交渉をして核兵器を放棄させるという外交努力のむなしさの説明です。
■【から(韓)くに便り】ソウル支局長・黒田勝弘 平壌は遠く切なくむなしい
ソウルから北朝鮮をながめていると、どこか切ない。西海岸沖での韓国哨戒艦撃沈や延坪島砲撃など、相変わらずの軍事挑発や、威張ってばかりいる平壌の女 性アナウンサー、また「自分が一番」みたいに、韓国や日本の悪口に熱を上げている官営メディアなど、いつも力み返っているにもかかわらずである。
このところの“北の風景”では、まず3代目後継者になった金正日総書記の三男、金正恩氏。公式登場以来、その姿がしょっちゅう紹介されているが、30歳前後なのに、ひとり丸々と太った姿が見るたびに切ない。いや、堂々として見栄えはいいのに、どこか痛々しい。
一時は飢餓さえ伝えられ、今でも食糧援助が国際的話題になっている北朝鮮なのになぜあの姿なのか。「自分だけがたらふく食っています」というイメージを、内外に宣伝しているようなものではないか。
後継者からははずれた次男の金正哲氏も先ごろ、シンガポールで目撃されている。多数のお供を連れた豪華外遊で、有名歌手のコンサートを見物しブランドものショッピングを楽しんでいた。
ラフなヘアスタイルにTシャツ、ピアスまで。国民には「主体思想」とか「朝鮮第一」「うらやむものはない」…といいながら、自分たちだけは“外国”を楽しんでいる。
金正日総書記の特別列車を連ねた“中国・大名旅行”もそうだ。隣国訪問で1週間にわたって5千キロも鉄道旅行してまわるとは、実に“浮世離れ”している。しかも行く先々で歓迎宴を開いてもらって。
そして中国訪問の際、いつも視察先の多くは先端産業なのだが、なぜ農業じゃないのだろう。「主体的」に人民を食わせられない現実をよそに、どこかずれている。
金総書記にとって最近の国際情勢で一番気になるのは、おそらく中東情勢だろう。
まず米軍によるウサマ・ビンラーディン殺害。米国は“9・11テロ”の背後としてビンラーディンを10年がかりで追跡し、ついに目的を果たした。米国を怒らせた場合の“怖さ”を実感していることだろう。
先の訪中に際し、外部世界では後継者・金正恩氏の同行が取り沙汰されたが、それはありえないことだった。独裁国家で権力のトップとナンバー2がそろって外遊などまずない。もし“事故”があれば大変だからだ。テロ国家・北朝鮮の権力中枢は自らそれをよく知っている。
もう一つ、北大西洋条約機構(NATO)軍によるリビアのカダフィ追放作戦も金総書記には重要な教訓になっているだろう。「カダフィが核開発を放棄しなかったらあれほど簡単には攻められなかったはず…」と。
金総書記はリビア情勢を見ながら「核は絶対に手放してはいけない」と胸に誓っているだろう。いや、権力内部ではそう“豪語”しているに違いない。
北朝鮮に核を放棄させるための「6カ国協議」は8年になるが、もはや“裸の王様”だ。話し合いでそれが実現するとはホンネでは誰も信じていないからだ。
政権崩壊にしろ政変にしろ北朝鮮の独裁体制の「変化」がない限りそれは無理と、今やみんなそう思っている。このホンネを隠しながら「協議再開に努力」などという国際舞台での外交努力も、切なく、むなしい(ソウル支局長)
杜父魚文庫

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