8059 米国大統領予備選最新事情 宮崎正弘

ハンツマン前駐北京大使は共和党穏健派。ペイリン前アラスカ州知事は消えつつある。ニュート・キングリッチ(元下院議長)がレースから早くも脱落した。政治イデオロギー的にはマケインに近く、共和党タカ派、かれが下院議長時代は、政治論争の中軸にいつもいた。
だが、どうやら予備選の準備をしていた選挙対策本部の陣営内部を結束させる政治力さえキングリッチにはなかったようで、選挙参謀が敵対陣営に走った。ほかの多くの選対幹部が集団で脱走し、もはや組織の体をなしていない。
2008年選挙本番で共和党のマケイン候補の副大統領候補だったサラ・ペイリン女史(前アラスカ州知事)も消えかけている。共和党内部の世論調査でも、もはや彼女の神通力は消滅し、人気も希釈化した。政治力がないことがばれちゃったから。
というのも同じ支持母体のティー・パーティは新星のミッシェル・バックマン下院議員(女性。アイオワ州選出)のほうに期待値を移動したためである。
現在、本命視されているロムニー前マサチューセッツ州知事だが、思想的穏健色が強く、医療改革など、共和党路線と必ずしも一致せず、支持率が飛躍しない。オバマ陣営は、共和党がロムニーをぶつけてくるなら楽勝と踏んでいる節がある。
局面が打開された。ジョン・ハンツマンが立候補を正式に表明したからだ。かれはクリーンエネルギーとエコ推進の政治家として印象が新鮮だから、注目度が高い。
ハンツマンは元ユタ州知事。さてユタ州と言えばモルモン教の本場。そう、ハンツマンもまた敬虔なモルモン教徒である(ロムニーもモルモン教徒)。
日本で活躍するモルモン教の代表選手はケント・ギルバード氏。かれは“モルモンの掟”として、青年時代に一年以上海外へでむき、布教活動をする。そのために海外へ赴く一年前に特別施設に入って、当該外国語特訓がある。ケントは沖縄万博のときに日本にやってきて、すっかり日本に魅了された。
▲オバマ陣営はなぜか本命ロムニーより、このハンツマンを警戒している
ハンツマンの場合、モルモン教の布教のため台湾へ赴いた。だから彼は中国語がべらべらであり、オバマが共和党のかれを北京駐在大使に目をつけた二番目の理由がこれだった。
一番目の理由? それは2012年の最大の政敵となりそうなハンツマンを遠くへ追いやっておくことが得策とオバマが考えたからである。
ハンツマンは全米有数の化学企業の御曹司、カネの苦労をしたことがないという。奇妙なスタンスとは中絶に反対し、しかし同性愛結婚には賛成する。外交哲学の基軸がないあたり、オバマに似ている。フレキシビリティに富むと比喩する向きもあるが、要するにカメレオンである。
まして政敵の政権下で外国大使に赴任した過去は、共和党内でもウケが必ずしも良くないが、それ以前、レーガン大統領時代からの忠臣ぶりは大いに飼われている。
ハンツマンはレーガン大統領にホワイトハウスのスタッフとしてつかえ、引き続きパパ・ブッシュ時代にはシンガポール大使、ブッシュ・ジュニア時代にはUSTR次席代表を勤めた。
かれの周辺の財界人はラスベガスのサンズを経営するシェルトン・エーデルセンらに加えて、シスコ・システム幹部ら大企業の経営者らと親しい。
北京大使時代に在北京米国商工会議所のラインから、訪中する米企業幹部とつねに接していた。思想的穏健派は共和党のバランスから言って、予備選をリードする基盤であり、オバマ陣営はつねに、ハンツマンの動向に注意を払っている。
杜父魚文庫

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