8102 欧州に中国の投機マネーが流入  宮崎正弘

欧州の政治家、財界人は中国からの投資を大歓迎しているが。庶民の対中感情は悪化、警戒が広がり、「反中」感情は五割を超えている。
ギリシア、スペイン、ポルトガルの国債をしこたま買い込んで、つぎに中国は欧州有名企業の買収に乗り出し、ボルボにつづいて、フランスのクラブメッズ(地中海クラブ)、ギリシアの老舗フォリフォリの筆頭株主に躍り出た。
温家宝首相の欧州歴訪は英国へ20億ドル、フランス、ドイツには100億ドルを超える商談がおみやげ、したがって欧州の指導者たちが揉手して赤絨毯を用意し、中国様、中国様の様相を呈しているあたり、日本の媚中派政治家や商人らと殆ど変わりがない。
従来、資源企業、鉱区、農地をねらってきた中國が投資対象をがらりと変更し、多数の特許を抱える有名老舗企業やユニークな技術を持つ企業に焦点を当て始めた。銀行、フィナンス会社も、これら買収リストに加わり、ロンドンなどで株式売買活発化の背景に中國の異様な企業買収の動きがある。
中国から旺盛な投機マネーが流入しているのである。
ロンドン株式市場で中国マネーが動いていると見られるのはエネルギー産業、ユティリティ、金属、ファイナンス、技術、消費関連などの企業である。
日本でも兜町を沸かす中国系ファンドの活躍が話題だが、資金規模から言えば欧米の中国マネーの十分の一に満たない。
他方、庶民の反応はどうかといえば、反中感情が爆発しているのである。
雇用を奪われるおそれが広がったのはイタリア、カナダ、米国、フランス、ドイツの順で、それぞれが50%を凌駕している。
とくに繊維と皮革製品のメッカを乗っ取られたイタリアでは、反中感情は60%近い。ちなみにこの調査はGLOBESCAN、PIPA、BBCなどにより、数字は英誌『エコノミスト』、2011年7月2日号。
親中派とみられる豪州でもメキシコでも五割近く、先進国での例外は日本。中国への警戒と不快感をしめる世論調査は30%を示したにすぎない。
米国は2005年に中国海洋石油(CNOOC)が米カリフォルニアのメジャー『ユノカル』への買収にいったん合意し、それを土壇場で議会が安全保障を理由に阻止し、豪州もこれにならってリオティント社の中国買収を止めた。
とくに米国はハイテク技術、特許得情報を盗み出す中国のスパイに対して警戒を強めており、欧州の楽天主義とは対照的である。
杜父魚文庫

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