8145 「菅氏はペテン師」をアメリカ・メディアはどう報じたか 古森義久

さて菅直人首相をアメリカのメディアはどう報じているのかというレポートの続きです。雑誌「正論」に私が書いた記事の紹介です。今回の部分は例の「ペテン師」についてです。
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実際、菅首相をはじめとする日本の政治指導者たちの内閣不信任案をめぐる言動となると、アメリカのメディアは実に冷たい筆致で伝えていく。
鳩山由紀夫氏が菅首相を「ペテン師」とののしったことも、その言葉どおりを忠実に報じている。前首相が現首相を「ペテン師」と断じること自体、近代国家の近代政治の名にふさわしくない事態だといえよう。
ウォールストリート・ジャーナル六月三日付の東京発の報道は次のように述べていた。
「鳩山氏は菅首相がすぐに辞任するという自分の理解と異なる予定を考えていると聞き、即座に攻撃を放った。『菅氏はすぐに首相を辞めねば、ペテン師(Cоn artist)だ』というのだ。鳩山氏はまた『菅氏は内閣不信任案の採決の直前には、辞任すると明言していたのに、不信任案が否決されるととたん、辞めないという。一国の首相がペテン師のようにふるまってはならない。もしそうなら私は不信任案に賛成すべきだった』というのだった」
突き放すように淡々とした記述のこの報道の主題はコン・アーティストという言葉である。やや通俗的なこの言葉をふつうに訳せば「詐欺師」となる。
アメリカでは政治家への形容としては考えられない言葉だといえよう。
もし連邦議会の議員や政府高官に対して反対派からコン・アーティストという言葉が飛べば、そうののしられた側は黙ってはいないだろう。犯罪者扱いの誹謗に等しいからである。
だが日本のように法と秩序がいきとどき、民主主義も成熟したといえる国で、前首相が現職の首相に対し正面から「ペテン師」と断じるのである。
しかもそんなひどい言葉の使用自体が論議を呼ぶこともない。アメリカ側の識者からすれば、まさに「なんだ、これは!」という反応となろう。(つづく)
杜父魚文庫

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