「永田町はかんかん(菅菅)照りだな」などと、自嘲ともジョークともつかないつぶやきが聞こえてくる。菅直人首相の<菅>ほど、流用範囲の広い名前も珍しい。鳩山由紀夫前首相は、鳩ポッポぐらいしかなかった。
それはともかく、民主党はポスト菅の代表選が迫っているはずなのに、動きが乏しい。名乗りを上げたのは小沢鋭仁元環境相(57歳・衆院山梨1区・当選6回)1人で、うわさの候補たちは音なしだ。
自民党も来年9月には谷垣禎一総裁の3年任期がくる。後継候補がそろそろスタンバイしておかしくない時期だ。
こちらも1人、林芳正元防衛相(50歳・参院山口選挙区・当選3回)だけが事実上の出馬表明をしている。昨年暮れのテレビ番組で、
「何年後に総理大臣を目指すか」と質問され、林は即座に、
「3年後」と答えた。また、今年3月出版した「国会議員の仕事」(津村啓介民主党衆院議員との共著・中公新書)では、
「山口という土地柄もあるのか、初挑戦の時から有権者に『総理大臣になるつもりはあるのか』なんて聞かれる。まだ無理だろうと思いながらも『将来は目指したい』と答えると、『それでいい』と。
ただ、長くやっているうちに『トップにならないとできないことがある』と気づいた。国にとって重要な事柄は、最終的に総理の決断で決まる。『この方向で行こう』というアジェンダ・セッティングも、基本的に総理の仕事だ。いまは本気で総理になりたいと考えている」
と語っている。6月27日、アジア調査会の講演でも、「チャンスがあれば出る」と決意を述べ、衆院へのくら替えもほのめかしたが、その後は一転、
「前例を打ち破り、参院議員でも総裁選に出たい。天命だ。逃げない」と、<参院首相>への挑戦を語った。林家は、芳正の父・義郎が元蔵相、祖父・佳介、高祖父・平四郎とも元衆院議員。つまり4世だ。
山口県には3世の安倍晋三元首相(56歳・衆院山口4区・当選6回)がいる。父・晋太郎は元外相、祖父・寛は元衆院議員、母方の祖父・岸信介は元首相。
不運の退陣から約4年、健康を回復し、最近は菅政権を手厳しく批判して、<震災復興、私ならこうやる>
という論文を雑誌に発表した。政権への再登板を狙っているのは間違いない。
昨年春には超党派議員ら約90人で<創生「日本」>を結成、会長に就いた。<真・保守政策研究会>(故中川昭一会長)を継承したものだ。5月末発足した自民党の<増税によらない復興財源を求める会>でも会長に選ばれた。賛同者に森喜朗元首相、古賀誠元幹事長ら約50人が名を連ねている。
自民党、経済界に安倍待望論がじわりと増えてきた。側近は、「政治情勢極めて流動的なので、慎重、控えめにしている。もちろん再起です。体調万全」
と来秋出馬に肯定的だ。党内には、石破茂政調会長、小池百合子総務会長、河野太郎元副法相らを推す動きもある。
菅首相の進退、衆院解散含み、政界再編の流れ、と流動要素が多いなか、民主、自民両党の党首選びがはずみになればいい。
「自民はひょっとしたら、安倍、林の<長州戦争>になるかもしれない。それもいい。平成維新らしくて」という声も聞いた。(敬称略)
杜父魚文庫
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