オバマ大統領がついにチベットの宗教指導者ダライラマとホワイトハウスで会見しました。7月16日の土曜日のことです。45分ほどの会見でしたが、意味は大きいといえます。というのはオバマ大統領はダライラマが前回、ワシントンを訪れた際には、あえて会見を避けていたからです。その理由は当然ながら中国への懸念でした。
今回も中国政府はアメリカに対し、大統領がダライラマとは会わないよう要求していました。オバマ大統領はその警告を無視した形となります。中国には必要以上に気を遣ってきたオバマ政権にしては珍しいことです。
しかしオバマ大統領のそうした動きの背景にはアメリカの議会や民間で中国のチベット弾圧を非難する声がきわめて強くなってきたという事実があります。大統領もそんな動きに背中を押される形で、ダライラマとの会見に踏み切った観があるのです。
そうした中国非難、チベット人擁護の高まりの一例を以下に紹介します。
【ワシントン=古森義久】米国の「中国に関する議会・政府委員会」が13日に開いたチベット問題についての討論会でオバマ政権の高官や上下両院議員から中国政府のチベット人弾圧を激しく非難し、チベットの最高宗教指導者ダライラマとの対話を求める意見があいついで表明された。
米国の立法、行政の両機関が合同で中国問題を審議する同委員会は同日、「ダライラマのこんごの役割」という主題の討論会を開いたが、議長のシェロッド・ブラウン上院議員(民主党)は中国政府がダライラマとの対話を拒むことを批判し、「チベット人の人権を弾圧し、宗教、表現、結社などの自由を奪っている」と非難した。
同議員は中国政府のチベット人弾圧は昨年春以来、さらに「過酷で残酷」になったとして、とくに「チベット人の言語、文化、宗教への攻撃は意図的、かつ政治的だ」と述べた。
ティム・ウォルツ下院議員(民主党)も中国政府が現在、数百人のチベット人を「政治犯」として不当に拘束していると指摘し、中国のこの種の弾圧は国内の不安定を増すだけでなく、米中関係にも悪影響を及ぼす、と警告した。
オバマ政権を代表して発言したマリア・オテロ国務次官(チベット担当特別調整官)も、とくに中国政府の学校教育でのチベット語の禁止やチベット仏教の儀式の禁止を批判し、「中国当局は多様な文化を自国の主権への挑戦と受け取っているが、誤りだ」と強調した。
同次官はまた中国政府がチベットの独自の文化を認める真の自治を確立するため、ダライラマとの対話を始めることがヒラリー国務長官の切望だと証言した。
チベット人の代表たちも討論に加わり、ダライラマ支持の集会に参加しただけで22年の懲役刑を宣告され、11年を刑務所で過ごしたという女性ナガワン・サンドロルさんも「何度も拷問を受けたが、米国の圧力で解放された」と述べた。
「中国に関する議会・政府委員会」は同日、中国当局が身柄を拘束しているチベット人政治犯のうちの30人についてのデータベースを公表した。この資料ではチベット人の弁護士、作家、僧侶、教員、芸術家などチベットの権利や文化の保存に活動してきた男女の逮捕と拘束が詳しく報告された。
オバマ大統領のダライラマとの会見は米国側のこうした動きの帰結だといえる。
杜父魚文庫
8150 ダライラマを支援するアメリカ世論 古森義久

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