深海探査挺、数千メートルの深海に眠る資源を漁り始めた。レアアースを大量に含む泥が太平洋に夥しく分布している実態は、東大加藤泰浩準教授らのチームが調査し、中国の埋蔵の800倍と試算したことは、広く世界の関心を集めた。
同チームは太平洋のレアアース分布を水深3500メートルから6000メートルの調査地点78ヶ所でサンプルを採取し、とりわけハワイ近辺、仏領ポリネシアのタヒチ島周辺などに400ppm以上という、高濃度の分布状況が把握された。
これらのレアアースはハイブリッド・カーのモーターに使う磁石やLED(発光ダイオード)に欠かせない希土類で、なかでもタヒチ島周辺の泥を採取すれば日本の消費量の二年分がまかなえる計算という。
問題は国際法上、主権の及ばない公海上の資源は「国連海洋法条約」で保護されていること。ついで採取コストが、はたして商業生産に乗るか、どうか。
日本のEEZ(排他的経済水域)には、こうしたレアアースを大量に含む泥が分布していないのか、どうか。
中国のレアアース輸出停止ならびにコントロールは明らかにWTO違反であり、中国は米国の抗議を呑んだかたちだが、実際には供給を制限していることに変わりがない。
そのうえで中国はハワイ近海に深海探査挺を派遣したことが明らかとなった。2011年7月1日、共産党創立九十周年を記念して、中国の有人深海探査挺「蚊龍」をハワイ近海におくりこんだ。
中国は2002年に海底探査計画を発表し、この「蚊龍」の開発に着手し、本拠地を山東省青島に置いた。青島には「深海艇探査中心」が置かれる。
中国の最新鋭の深海底探査挺は、単にレアアース探査のみならず深海にもぐって敵潜水艦の航行妨害、海底ケーブル切断など軍事目的にも使われる。
げんに中国は台湾、ベトナム、マレーシア、ブルネイなどと領有権をあらそう南シナ海で2010年に、3759メートルの潜行に成功した実績がある。
3500メートルより深い海に潜る能力をもつのは米、日、ロシア、フランスの四カ国しかなかった。将来の「蚊龍」の潜水目標は7000メートル。過去最深潜行記録は米軍有人潜水艇の6000メートル(シークリフ、89年退役)。
レアアースをごっそり深海からもいただく腹づもりのようである。
杜父魚文庫
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