8210 偽アップル、偽IKEA、偽バックから次は偽チベット人が登場 宮崎正弘

人はだますために存在し、だまされた人間の方が馬鹿なのである。中国にチェーン展開する珈琲店はスタバが有名。ファストフードもマック、KFC,吉野屋、味千ラーメン。
「上島珈琲」と聞くと、日本人経営と勘違いしそうになるだろう。中国でチェーン展開する「上島珈琲店」は台湾華僑が経営している。おなじく日本人を連想される「新島」「大島」という珈琲チェインがあり、料金はいずれも高い。すべて台湾系の華僑が経営する。ちなみにブルーマウンテン一杯は750円ほど。中国の庶民とは無縁の高級店。
南昌の街で見つけて笑ったのは「直島」珈琲店。どうして「◎島」と「島」をつけるのか。ともかく日本名を関すると高級感がでるというのは中国人の信仰に近い。
四川省・成都で「偽アップル・コンピュータの店」が登場したときは米国のマスコミが一斉に非難した。北京郊外にあった偽ディズニーランドは米国の抗議を前に閉鎖した。先月、万里の長城に近い場所の真横を通ったが、人っ子ひとりいない、だだっぴろい偽ディズニーランドは凄惨である。幽霊の森のよう。
今度は雲南省・昆明市に、偽IKEA家具センターが登場した。なにしろグッチ、ディオール、ヘルメス、シャネルなど偽バックはお手のもの、人はだますために存在し、だまされた人間の方が馬鹿なのである。
▲舞台装置でも買い物客を騙すんだ
上海の新名所は「田子坊」。ガイドブックは「新天地」とか豫園とか、南京路、外灘はでても、田子坊はまだ紹介していない観光案内が多いのではないか。
表参道と代官山とを浅草を五分の一に縮めたような、ともかく外国人が好みそうな店ばかりが狭い路地に並ぶので風情がある。
なるほど、これが近世のチャイナか、と。ブティック、ファッション、ビアホール、フランス料亭等々。この田子坊も小説の舞台の一つに設定して、高樹のぶ子が書いた小説は「甘苦上海」。日本経済新聞に連載されたのでご存じの読者も多いだろう。
最新の上海事情をやまのように盛り込んでの、派手な恋愛小説だが、チベットの謎の少年が出てくるのが田子坊のチベット民芸店なのである。
二年前に、このチベット民芸店を石平さんと取材した。経営者は漢族、飾ってあるのはチベットの絵画、曼荼羅の掛け軸、彫刻、アクセサリー、民族衣装。とりわけ二階に展示してあったのは仏教画(タンカ)だった。
七月に同じ店に入った。二年ぶりである。経営者は相変わらずの漢族で民族衣装を縫っているチベット族の女性がふたり。目の前に手製の衣装やら、テーブルクロスなどを売っている。ガイドに連れられて日本人も買い物していた。
 
二階へ上がる。タンカが数点。これらはいずれもチベットで買う値段の四倍から五倍する。だから売れない。一点が二十万円前後。
さてチベット族の売り子に話しかけて、意外や意外、彼女らはミャオ族だった。チベットの民族衣装に見える刺繍もミャオ族の衣装というではないか。外国人にはチベット族とミャオ族の区別はつくまい。
なるほど漢族の経営者なら、こういう商売をやるのだろうと別な意味で感心した。もちろん、小生は冷やかしであり、タンカは見るだけ。曼荼羅の掛け軸は拝むだけ。
横町のビアホールで食事をする気もない。あの衛生状態で作った料理は、やっぱり食欲がわかない。花園ホテルへ戻って食事をした。
杜父魚文庫

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