8298 永遠のトロイカ どんぐりの背比べ代表選 阿比留瑠比

どんぐりの背比べのような民主党代表選の候補者たちから、宮沢賢治の童話「どんぐりと山猫」のストーリーを連想した。
ある日、一郎少年のもとに山猫から怪しいはがきが届く。「丸い」のや「とがっている」のと、300を超えるどんぐりたちがそれぞれ「自分が一番だ」と言い争う裁判への助言を求められた一郎少年は、山猫にこんな判決を下させる。
「このなかで、いちばんえらくなくて、ばかで、めちゃくちゃで、てんでなっていなくて、あたまのつぶれたようなやつが、いちばんえらいのだ」
どんぐりたちはシーンと固まってしまった。一方、一郎少年ならぬ小沢一郎元代表はかつて、自身が背後で操るため「御輿(みこし)(首相)は軽くてパーがいい」と言い放ったとされる。
小沢氏はいま、100人以上の党内最大勢力を誇りながら、代表選で勝ち馬に乗るため「最後まで態度は明らかにしない」(周辺)作戦だ。きっと、扱いやすいどんぐりの品定めに余念がないのだろう。
山猫といえば、小沢氏は伊仏合作映画「山猫」が好きでよく引用する。平成18年4月の代表選では、その中の「変わらずに生き残るためには、自ら変わらなければならない」とのセリフを引いて、「私自身がまず変わる」と強調しもした。
だが、人間そうそう変われるものではなく、小沢氏は相変わらず「裏方支配」がよく似合う。そして、民主党自体もあれから何ら成長・成熟した跡がない。
小沢氏、菅直人首相、鳩山由紀夫前首相の「トロイカ」(3頭立て馬車)に輿石東参院議員会長を加えた「トロイカ+1」が中枢ポストや実力者の地位を占め続け、いつまでたっても後進に主役を譲らない。切っても切っても金太郎あめのように同じ顔が出る。
小沢氏は現在、党員資格停止処分を受け代表選への投票権も持たない刑事被告人だ。にもかかわらず、海江田万里経済産業相、馬淵澄夫前国土交通相、小沢鋭仁元環境相、鹿野道彦農水相…と代表候補たちはわれさきにと「小沢詣で」に忙しい。あまつさえ党員資格停止処分の撤回まで論じ始める始末だ。
小沢氏と距離感がある前原誠司前外相にしたところで、今年5月には小沢氏と渡部恒三最高顧問の合同誕生会の代表世話人を務めるなど、ちゃっかり小沢氏とよしみを通じている。野田佳彦財務相も「政治力量のすごい方だ」とリップサービスを忘れない。
これでは、誰が首相になろうとも「小沢院政」の到来は確実だろう。「この道はいつか来た道」だ。「国民もその辺(トロイカ体制)は越えて行ってくれと(言っている)」6月にはこう述べていた反小沢“急先鋒”の仙谷由人官房副長官も、最近では融和路線に転じている。かくして、引退約束を撤回した鳩山氏も、昨年の参院選大敗の責任者の一人である輿石氏も、小沢氏の忠実な番頭を務める限り安泰だ。
首相は昨年8月30日、鳩山氏に小沢氏との党代表選回避のため「トロイカ体制の原点を大事にしてやっていこう」と言われ、いったんは受け入れた。
このときは首相は、翌31日に「クリーンな政党」を主張して前言を翻し、「政治とカネ」の問題払拭を旗印に小沢氏と対決した。
だが、これも腰砕けとなった上、後に自身の外国人からの違法献金問題や拉致容疑者家族の関係団体への巨額献金問題が発覚し、正当性も説得力もなくなった。
もはや民主党に自浄能力など期待できない。誰もけじめもつけず責任もとらない永遠のたらい回し、トロイカ体制はまだ続く。まさに「国難去ってまた国難」である。(産経)
杜父魚文庫

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