あのバフェットが「危ない銀行」(バンカメ)に50億ドルを出資。狂ったのかと市場は株安で反応、しかし市場安定の戦略的「使命感」かも。
世界一の投資家(世界一の金持ちでもある)ウォーレン・バフェットが50億ドル、BoA(バンクオブアメリカ)に出資する。優先株とワラント債を現金50億ドルと取引、この優先株は年利6%という優遇条件。
このニュースを英紙『ファイナンシャル・タイムズ』も『ウォールストリート・ジャーナル』も、一面トップ、もしくは準トップ扱い。
とりわけ英『ファイナンシャル・タイムズ』は五本の記事をならべて、(1)バフェットはこれ以上ないという有利な条件を示され、(2)この取引ボリュームは五月のシティバンク以来であり、(3)しかしウォール街の株価は上向きにならず、市場はバフェットの介入くらいで株式市場が立ち直らないことくらい明瞭であるとの認識だった<ちなみに同日NYダウは170ドル下落>、(4)出資に至るまでの経過(5)コラムによるコメントと五本立てだ。
ところが日本のメディアはバフェットの動向をほぼ黙殺し、日本経済新聞だけが、小さく報じただけ。
投機ではなく長期的投資を標榜するウォーレン・バフェットは、ハイエナのように動き回るスペキュレータを毛嫌いしているとも言われる。
バフェットが投資対象とする企業は「長期の成長がのぞめる」「経営者に哲学があり、しっかりしている」「配当重視、つまり利益を上げて、それを着実に設備投資に回している」。
それがバフェットの原則。
当然ながら、そうした企業は「借金が少ない」か、無借金経営。一時のトヨタのようである。だからバンカメへの出資は原則からやや逸脱した例外となる。
2011年にバークシャー・ハザウェイが選定した銘柄はちなみに次のような企業である。
コカコーラ(食品)、ウエルズ・ファーゴ(金融)、アメックス(金融)、P & G (プロクター&ギャンブル、生活用品)、クラフト・フーズ(食品) ウェスコ(金融)、ウォルマート(小売)、USバンコープ(金融)、コノコフィリップス(石油)、Johnson & Johnson (ジョンソン・エンド・ジョンソン、生活用品)
これに加えてバフェットは、バンクオブアメリカの大株主へ進出したというわけだ。
ウォーレン・バフェットは、つねにソロスの対極に位置する発言を繰り出すし、投資行為もソロスとは逆である。
上記ウエルズ・ファーゴにしても、ソロスは全株を売却した。バフェットは強気で買いに動いた。
バフェットは米国の富裕層は増税に応じるべきだと主張した。「年収が百万ドル以上ある富裕層は、億万長者にやさしい議会に甘やかされてきた。痛みを分かち合う政策を政府が本気で考える時だ」(NYタイムズへの寄稿)。
どうやらバフェットの基本にあるのは愛国心と倫理観と古い時代への郷愁?
杜父魚文庫
8308 ウォーレン・バフェットが50億ドル投資の怪 宮崎正弘

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