8322 日本から金が中国へ輸出?  宮崎正弘

日本人が金を売り、中国人が金を買う 単に投資感覚が180度違うだけか?国家が破綻する前に逃げ出すときの通貨は金しかないからである。
八月だけで金価格は20%以上上昇した。一オンス=1900ドル台を突破したことは、歴史上、かってない「暴挙」とも言える。金買いは手控えられ、ソロスは金信託証券を売り払い、金を保有している人は絶好のチャンスと判断して売りに走る。
日本では金買い取り専門店の前に早朝ら行列が出来ている。アクセサリー、ネックレスの金まで売りに来る。これは「こんな高いチャンスは二度とないからいまのうちに利食いをしよう」という動機。日本では、金を買う人は殆どいない。となれば買い取り業者はキャッシュをうならせながらも市場原理としては売り手が不在ならどうするかを考えるだろう。
いた。高くてもなんでも、片っ端から金を買う、大集団。最大の買い手は中国様である。日本から金が中国へ輸出されているのである。あべこべも甚だしい。地球が逆さまになったような感じである。
基本的に金投資は「万一」の通貨であり、退蔵になる。金利がつかない。だから西側では、金投資はポートフォリオの10%が上限というのが常識。
世界の常識は日本の非常識だが、この金に関して言えば世界の常識は中国の非常識となる。金を買う最大の動機にインフレヘッジをあげた中国人が多かったが、たしかに預金に回す利息より、金の上昇率が高ければ、そのほうが有利だろう。
しかし最大の潜在理由はそうではない。人民元がいずれ紙屑になり、国家経済が破綻するであろうことを中国人は本能的に知っている。動物的カンが通貨より、不動産より、商品投機より、まず金の退蔵を始めているからであろう。
中東からインドにかけて庶民の金志向も基本的に同様だが、美意識的にもイスラムとアラブ世界は金が基本にある。
ベトナムからボート難民が逃げ出すとき、華僑の末裔らは金を持っていた。それも持ち運びが便利な50グラム、100グラムといった金のインゴットのミニチュア版(日本の脱税に使われるのは100グラムではなく一キロのバーである)。
台風や地震の前にネズミは集団で地上に現れ、大脱走をはかる特徴がある。「現在、中国で売れている金は50グラム、100グラムのものが圧倒的」(ヘラルドトリビューン、8月30日付け)。金の異常なアンバランス。何かの予兆である。
 
杜父魚文庫

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