8339 米太陽光パネル産業の大手四社が倒産  宮崎正弘

米国の太陽光パネル産業は破滅的打撃、すでに大手四社が倒産。世界一の太陽光発電をめざす中国は欣喜雀躍、世界市場に覇権か。
太陽光パネル産業の育成は米国のエネルギー省が推奨し、オバマ政権は破天荒の予算をつけた。作業は順調に離陸する筈だった。
ところが米国の太陽光パネル製造業大手三社が倒産、もしくは会社更生法の申請という、想定外の事態に陥った。次世代エネルギーは太陽光? こんな筈ではなかったと歯ぎしりしても遅い。
米国の太陽光パネル製造業の大頓挫を目撃して、明日にも提灯行列でもやりかねないほどの欣喜雀躍は中国である。世界一の太陽光パネルの製造王国となって世界市場の席巻を開始した。
詳しく追跡してみよう。米国政府は5億2700万ドルを太陽光パネル製造業のソリンドラ社に資金援助した(開発予算の貸し付け)。太陽光技術で斯界に評判の高かったソリンドラ社(カリフォルニア州)にオバマ政権は肩入れしたのだ。
つぶれかけのクライスラーを時の政府はテコ入れし、あるいはGMをテコ入れして再生させたように、ソリンドラ社は、これで立ち直る予定だった。米エネルギー省は全体で24億ドルの次世代エネルギー開発予算を分配しており、その四分の一近くを注ぎ込んだわけだから、このソリンドラ社の倒産は政治問題化する可能性が高い。
げんにクリフォード・ステアンズ(フロリダ州、共和党)連邦下院議員は「納税者の貴重なカネを無駄にした」として議会で厳しく追及する構えだ。
 
予定は狂い、同社は工場を閉鎖した。オバマ大統領は同社を見学したこともあるが、倒産理由は「需要がおちこみ、世界的価格競争がはげしくて・・・」。
個人投資家は政府支援のプロジェクトと聞いて安心して、10億ドルを投資した。同社従業員およそ1000名は解雇された。株主らは代表訴訟を起こすだろう。
▲奇抜なデザインと熱吸収の効率がコスト高に繋がった?
米政府はしきりに弁明する。「競合するドイツと中国の政府補助金が膨大であり、とても開発競争に勝てない」と。
しかし業界筋は言う。「あの会社の太陽光パネルはデザインが奇抜で、市場への適合性がすくない金食い虫である」。
共和党の矛先は、同社の社長がオバマ選挙への献金者であり、政治コネの臭いがすると、スキャンダルの側面からも批判を開始した。
米のスペクトラワット社(NY州)とエバーグリン・ソラー社(マサチュウセッツ州)も、同様な理由により8月に会社更生法の適用を申請した。2010年春には、第四位のBPソラー社(メリーランド州)も倒産している(ヘラルドトリビューン、9月2日付け)。
ということは米国における太陽光パネル製造業界は、壊滅状態とは言わないまでも相当の後れを取ったことは事実である。
 
他方、中国は、発電量においても米国の1000万ギガワットに比較しても飛躍的躍進をみせて、11000ギガワット、パネルメーカーは中国政府の膨大は補助金をいれて、開発製造の余念がなく、その質において劣悪な実態はさておき、日米欧の太陽光パネルとコスト競争では圧倒的優位に立つ。
中国の太陽光パネルの三大メーカーはサンテック・パワー、インリ・グリーン・エネルギー社、トリナ・ソラー社である。それぞれは決算で利益を申告している。
労働力の安さがカバーしての競争力ではなく太陽光パネルはハイテクであり、中国は大量生産により75%のコストダウンに成功したと胸を張るが、パネル設置者(個人、法人を問わず)に中国政府が補助金をつけて設備の拡大を奨励するうえ、広大な土地は党と地方政府の命令一つで巨大設備の設営が可能である。
▲中国の遣り方は公正とは言えない
太陽光の電力料金も特別措置を施すなどして国家あげての事業の一つとしている。この点では風力発電への異常な肩入れと似ている。つまり、こうした政府補助金はWTOルール違反である。
六月に米国からWTOに提訴された風力発電の補助金問題は、中国が敗訴して補助金をやめるとしたばかり。米国は「中国は不当競争」としてWTOに提訴の構えも崩してない。 
いずれにしても、酷似するパターンは海外の技術を習得し、いいとこ取りで技術を上げ政府から膨大な補助金をせしめて競争力をたかめ、その蓄積で輸出商戦に打って出るというポイント。つまり新幹線プロジェクトや風力発電の遣り方と同様なのである。
杜父魚文庫

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