対米と対EUの黒字基調は増加しているが、資源国とは大幅な赤字。中国の対豪州貿易赤字は、かつての対米黒字のごとし。
中国は豪州から石炭、ガス、鉱物資源、レアメタルなどを輸入しているが、貿易バランスはまもなく中国側の入超が、400億ドルに達する。同様に資源国のカナダ、ブラジル等との貿易は赤字である。
対日、対台湾、対韓国そして対ドイツは、中枢部品、コンポ、ハイテク製品を輸入している関係で赤字基調は変わらず、とくに対韓国のそれは300億ドル近い。日本との貿易赤字は恒常的と言えるが、220億ドル前後とやや改善されているのも、日本は中国から野菜、穀物、魚介類にくわえて加工食品などを輸入し続けているからである。
中国の外貨準備は貿易黒字に数倍の規模で、直接投資は1000億ドル強だから、ほかに投機資金が貿易黒字の何倍か、流入していると考えられる。
他方、従来貿易黒字だったEU諸国、とりわけ英仏イタリアとの関係はかわらず、また対米黒字は300億ドル台である。インドとも180億ドル程度の黒字である。
ただし、全体の基調として、貿易黒字による国富の増加パターンは劇的に変化しており、輸出志向型から輸入依存とのバランスにいびつな構造的変化が、これからいかなるカーブを描くか、注目される。
いずれにしても中国が「世界の工場」であり、「労働力が安い」という時代は確実に終わりつつある。
杜父魚文庫
8392 中国の貿易パターンが劇的に変化し貿易黒字が激減 宮崎正弘

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