共和党有利な政局に増税、富裕層敵視、軍人恩給削減と派手に喧嘩をうった。オバマ大統領の増税案、日本と軌を一にしているのは偶然の一致だが、その遣り方はまるで違う。
大向こうをうならせるほどに、これは徹頭徹尾、再選のため計算された戦術なのである。
日本の累進課税に比べると米国の税率は金持ちが太るシステムでもある。米国の現行所得税率は10%,15,25,28,33,そして35%が最高税率。中間層は15%か25%の税率適用組が多い。
オバマ政権は、今後十年間に、富裕層をターゲットとして、1兆5000億ドル(約115兆円)の増税を行うと発表した。今後、十年間で3000億ドルの予算削減を行うという発表と、これはセットになった。
おりしも全米一の投資家、ウォーレン・バフェットが提案したように、「富裕層から税金を取れ」という空気を読んでの措置だが、これをさっと「バフェット・ルール」と言い換えて選挙戦術用に応用するあたり、巧妙で狡知に長けたオバマらしいが、共和党は賛成していない。
共和党のアキレス腱を狙い撃ちされた感じだからだ。
共和党大統領候補陣営で経済政策の助言を勤めるグレゴリー・マンキウ(ハーバード大学経済学教授)は「バフェットが言っている増税プランは怪しい。投資家への税率は15%であり、彼の会社幹部の所得税率35%と同位置レベルのモノではない。だから同次元で税率を論じて増税だと主張するのは矛盾した提案だ」と批判している。
オバマは増税と予算削減を同時並行で可能としているあたり空論に近いが、もっとも注目すべき方針のなかで、軍人年金の削減がある。
これは一か八かの政治的賭けではないのか。オバマは、在郷軍人の票はしょせん、自分には回ってこないと判断して支持者と峻別する作戦にでたのだ。
▲オバマの増税路線はリスキーな政治的賭けだ
もちろん、共和党は猛烈に反対する。在郷軍人会は共和党支持者が多い。民主党は、政策的にへまが続くオバマ再選に懸念を深める有様だ。
一世紀もの長き牙城といわれたNYのど真ん中で、あろうことか下院補選に共和党が当選するという椿事も発生したばかりである。
が、オバマ陣営の再選戦略としては悪くない遣り方である。はっきりと共和党の大票田に喧嘩をうっているからである。
もともとオバマは財政赤字削減策を実施し、当面の赤字国債上限を共和党と取引してきわどいタイミングで議会を通過させたものの、民主党の進める福祉政策、とりわけメディケア((高齢者医療保険制度給付金)やメディケード、社会保障政策の維持のため財源確保を目指している。
すべてのやり口は再選のためであり、国家国民のためではないところ、何処かの國の政権与党と似ている。ベイナー下院議長(共和、オハイオ州)は「共和党としては増税を受け入れる考えはない」と言明し、またメディケアなどの給付金制度の規模縮小を求めていた。
マコネル共和党上院院内総務は「拒否権の脅威や大幅増税、実体のない節減など、まったくもって経済成長や雇用の伸び、赤字削減につながらない」と明確に述べた。
となるとオバマの増税路線はそうとうリスキーな政治的賭けであることが分かる。
杜父魚文庫
8401 やっぱり黒人弁護士出身、オバマは喧嘩の遣り方を知っている 宮崎正弘
宮崎正弘
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