もうすでに旧聞に属することですし、もう退任した人についてあれこれ言うのもどうかとは思うのですが、どうしても書いておかないと気持ちが悪いので今更ながら触れておきます。思ったことは表に出さないと気持ちがずっと落ち着かないので……。
菅直人前首相は先週の15日木曜日、菅グループの会合に出席し、したたかにお酒を飲んでいました。そして会合後、参加者を代表して江田五月前法相が菅氏の様子をこう述べていました。
「今日は全くのご苦労さん会で、菅さんももともと裃を着ていないたちですが、今日はますます裃を脱いでかなり酒が進んでいたようです。『これから自分で役に立つならば、選挙の応援など一生懸命やります』というようなことを殊勝にも話していました」
この江田氏の物言い、「殊勝にも」という表現ぶりなどから、首相と閣僚という関係ではなく、素の両者の間柄が透けて見えて興味深いところですが、それはともかく、これから菅氏を選挙応援に呼ぶような候補はどれぐらいいるでしょうかね。
で、確かその日に発売された週刊文春(9/22号)のグラビアページに載っていた「吉祥寺秋まつり」の写真が強い印象に残りました。法被を着て、顔ににやけた笑顔を貼り付けてあいさつする菅氏に対し、御輿の担ぎ手たちはそっぽを向いてほとんど顔を向けず、むしろ顔をしかめていました。
また、小学校低学年か幼稚園児ぐらいの兄が、実に嫌そうに菅氏と握手されられている様を、父親の腕の中から「こいつ、何なんだ?」というような冷たい視線で見つめる赤ん坊の写真もあり、もし可能ならば賞を与えたいような傑作となっています。撮影は細田忠氏とありましたが、実に素晴らしい。私はやはり、ビデオ映像よりも一瞬を切り取る写真の方が好みに合います。
ともあれ、ここからが本題なのですが、その翌日の読売新聞の政治面のベタ記事に、「うーん」とうならされたのでした。見出しは「『亡国の宰相』出版」という本当に小さなもので、要は震災から今年9月まで、読売が企画記事などに書いたものをまとめて出版したというお知らせです。
ただ、この「亡国の宰相 官邸機能停止の180日」というタイトルもなかなかなものですし、さらに帯のキャッチコピーにしびれました。それは
《戦後最大の危機に「最悪の愚宰相」を戴いた日本の危機。震災を人災に変えた民主党の大罪を問う》
というものでした。「最悪の愚宰相」って、なかなか直球勝負で好ましいですね。辞めてすぐ、ここまで言われた首相は歴代いなかったのではないかと思いますが、「愚」というのはさましくぴったりです。なのに、ご本人は退任後も盛んにメディアで自己正当化と自己弁護の言葉を紡いでいるから始末に悪いですね。
また、いわゆる文化人の中には、いまだに「菅さんの何が悪かったのか分からない」「全く無意味な菅おろし」などど妄言を吐く人たちがいるわけですが、現場でアレを見てきたら、どこの社の記者であろうと同じような結論になるということでしょう。
すみません、ほとんど意味のないエントリでしたし、他紙の本を宣伝するのもいかがかとは思いましたが、ここ数日、どうしても紹介したいという気持ちに煩悶していて、その誘惑にとうとう屈してしまいました。
まあ、次の野田佳彦首相もどうもなあ、という感じですね。輿石東氏を幹事長に据えて「与党の一致結束にとって大きな意義を持つ」(15日の参院本会議)などと自賛していましたが、輿石氏の秘密主義に早速、国対幹部3人が辞表を出す騒ぎになりましたね。国会をわずか4日間で閉じるという輿石氏の「閣僚隠し」作戦も失敗に終わったし、一部で評価されているような「上手い人事」だったとは私には思えません。
これからも、野田内閣はいろいろありそうですね……。
杜父魚文庫
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