ロシアは暗黒の時代、「ビザンチン帝国の再来」から逸脱したとルシコフ。クレムリンにさからうと裁判沙汰、財産没収。政治生命は絶たれる。
クレムリンという総称は、この場合、権力中枢を陣取るエスタブリシュメント。このところクレムリンがロシアの全マスコミを支配し、批判したジャーナリストは消された。議会は与党の翼賛政治、あやつり人形らが討論まがいを展開し、ロシアの経済はほぼクレムリンを陣取る旧KGBマフィアが寡占する。
プーチンに逆らった政敵はほぼ壊滅、ホドルコフスキーは牢獄にとじこめたまま、彼の経営したロシア最大のメジャー「ユコス」はクレムリンがみごとに乗っ取った。
企業乗っ取り、脅迫、反対者の暗殺。危険を感じた政治家はさっと国外逃亡。ロシアの基幹産業である石油、ガス、ならびに軍需産業のあらかたはプーチン与党が支配し、正義、公平というただしき路線から大きく逸脱した。クレムリンを批判しているのはロシア共産党だけ、という皮肉。
かつてロシア政界で最もパワフルと恐れられ、モスクワ市長をながく務めたルシコフは、一年前に失脚(プーチンが解任)、いまは大学教授で、政治的には鳴かず飛ばずの境遇だが、夫人に起訴の危機が迫る。
プーチンか、あるいはメドベージェフ大統領再任かという政治境遇下、すこしでも政敵の動きを封じ込めようとクレムリンは束になってルシコフの次の政治的動きを遮断しているわけだ。ルシコフは次の大統領選に打って出る用意があるらしい。
ルシコフ夫人のエレナ・バツリナは西側のどこかの國に事実上亡命している。彼女はルシコフ全盛時代にモスクワの不動産ビジネスで億万長者となった。
この過去を不正取引だと、検察は起訴準備をすすめており、もしルシコフ夫人がモスクワへ帰国すれば拘束されることは間違いなしという。
ルシコフは久しぶりに西側マスコミとの会見に応じ、「いまのロシアの政治は暗黒にもどりつつあり、ビザンチン帝国の再来といわれた過去の政治は、クレムリンの気まぐれで崩壊し、まるで別のかたちの、異様に肥大したビザンチン帝国が形成されかけている」と言った(ヘラルドトリビューン、9月21日)。
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読者の声 どくしゃのこえ DOKUSHANOKOE 読者之声
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(読者の声)「財務官僚に、経済成長の発想なし」というのが、9月13日の野田首相の所信表明演説を聞いて、先ず浮かんだ率直な感想だった。恐らくは財務官僚の作文に野田氏が自分のフレーズを散りばめて出来たであろうその演説全文を改めて読み返し、筆者なりに意訳すると以下のようになる。
◆所信表明演説<意訳>◆
●南三陸町の防災職員として、住民に高台への避難を呼び掛け続けた遠藤未希さんをはじめ、原発事故対応をする東電職員や、復旧に従事する自治体職員らの行為に示された東日本大震災の中での日本人の気高き精神を忘れてはならない。
●大震災からの復旧・復興において、上記のような気高き精神に報いるための国民の側の最大の貢献・義務は財政健全化(増税)である。
この実現へ向け、自分は「正心誠意」行動するので、政府も企業も個人も、全ての国民が心を合わせて、力を合わせて、これに立ち向かおうではないか。
●なお、復旧・復興と日本経済の建て直しに於いて、経済成長と財政健全化(増税)は、車の両輪として同時に進めて行かねばならず、成長戦略と歳出削減等を歳入改革(増税)に先行して進める事は決してすべきではない。(参考:野田佳彦首相所信表明演説全文 http://www.47news.jp/47topics/e/219971.php)
なかでも演説からは、財務省の経済成長と歳出削減等と歳入改革(増税)を同時に進める事への強い拘りが読み取れる。
財務省は、「経済成長して後の増税」とは口が裂けても言わない。これは、素朴に考えれば、経済成長を実現させる自信がなく、それを条件とすると悲願の増税が出来なくなるからというようにも見える。
震災復興と将来の社会保障のために資金が必要なのは事実である。しかし、現状の日本経済のデフレ・低成長を考えれば、十分な経済成長を実現させる前に増税を行えば経済が失速することは、ほぼ確実だ。これは、民間会社に置き換えてみれば、容易に分かる事であろう。
中長期計画の販売量の確実性が低いため、経理部が値上げを提案するようなものである。販売努力をし販売量を増やす前に値上げをすれば、更に落ち込み、販売量×単価=売上高が減少するというのは、企業経営では常識以前だ。
◆官僚は、本義に帰れ◆
そもそも数百年に一度という大災害に対して、しかもインフラ整備が中心の震災復興に増税は必要なく、インフラの耐用年数60年償還程度の建設国債(もしくは復興債)を発行し日銀が引き受ければ済む事であり、復興税の発想自体が無意味だ。
確かに将来の社会保障のため巨額な費用が掛かる事は事実だが、これも震災復興を契機に新エネルギーを含む成長戦略を立案実行し、2~3%程度のインフレ目標を設定し日銀に国債引き受け等で実行させ、名目GDP3~4%以上の成長を成就させれば自然増収により2010年代半ばに予定されている増税幅は大幅に圧縮できるか、そもそも増税が不要となる。
それは、復興計画と成長戦略の中身と実行手段を衆知を集めて練り上げて、スピードを持って臨めば決して無理な事ではなく、増税前に政府は具体的な数字と日付入りでコミットすべきだ(思い切った少子化対策で出生率を上げ、成長戦略でのヘルスケア産業育成を寝たきり介護ではなく健康増進で現役世代を拡大する方向へシフトすれば、財政は更に改善出来る)。
既得権複合体が増税翼賛会と化し、TV各局で少なからぬニュースキャスター達が、あたかも増税は既定路線であるかのような巧みな司会進行をし、大手新聞各紙が社説で増税反対は非国民のように世論を誘導し、それは半ば成功しつつあるが、増税による日本沈没を座して待つわけには行かない。
増税に走る財務省ではあるが、国の台所を預かる資金繰り係として、役割上の使命感としては心情的には理解出来ないこともない。だが、財務省は経済成長の阻止に動いているというのが、より実態に近いのではないか。
「経済成長したら、増税が出来なくなる」
「経済成長したら、財務官僚の権限が相対的に小さくなる」
「経済成長し民間が潤えば、待遇上の優越性がなくなり逆に劣等感に苛まれる」
頑なに経済成長を増税に先行させない姿勢を見ると、本音ではこのような事を考えているのではないかとの疑念が湧く。
もしそうであるなら、勝栄二郎事務次官以下の財務官僚は、言葉は悪いが船体を喰い荒らし沈没させる「日本丸のフナクイムシ」に他ならない。
財務省を始めとした官僚組織は、本義に帰り安易な増税に走るな。経済成長での復興と繁栄の実現に向け、国家の大義を果たせ。(KS生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)財務省がエリートの集合体というのは神話にすぎず、多くは国益を考えず省益のみに走る土壌があり、ここへドジョウが迷い込んだ。
ドジョウの英語の意味は「馬鹿、のろま」が含まれます。
財務省幹部を全員、四ヶ月自衛隊へいれて国防のなんたるかを体験させよ。以前は三ヶ月と主張してきましたが、四ヶ月に修正。理由は自衛隊に四ヶ月プログラムがあり、極めて有効の由です(佐藤守『日本の空は誰が守るのか』参照)。
杜父魚文庫
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