8408 中国のハッカー攻撃にいらだち、通常戦争の一環と認識する米国 宮崎正弘

三菱、石川島播磨など防衛産業が被害を受けても元凶を名指ししない悠長な日本。米国はハッカー攻撃を通常戦争の一環と見なしている。
したがってペンタゴンの規定によれば、ハッカー軍団の元凶=中国は、いまの段階で名指しこそしていないまでも、まぎれもなく軍事上の「敵」である。
その「敵」を「友好国」だと言って、戦略的互恵関係などといまも寝言を並べる日本はハッカー攻撃の被害を過小評価している。
しかしハッカー攻撃の日本側の被害は想像より甚大である。わが防衛産業トップの「三菱重工業」東京本社のコンピューター・サーバー、パソコンがウイルスに感染した形跡がある事実が攻撃から40日以上も経過した9月19日に判明した。
三菱重工は「一部のコンピューター・システム情報が流出した可能性がある。しかし製品や技術に関する重要情報の流出は確認されていない」と会見した。
ウィルスの感染が確認されたのは、原子力プラントやロケットエンジンの工場など11拠点にあるサーバーやパソコン83台。セキュリティー会社の調査で外部から侵入された形跡があった。
IHI(石川島播磨重工)も、サーバーやコンピューターが「サイバー攻撃を受けた」と発表した(9月20日)。しかし現時点でウイルス感染は認定されていないので「情報流出はない」としている。
▲ 三菱、石川島播磨など防衛産業が被害を受けても元凶を名指ししない
IHIも三菱と並んで防衛ならびに原発技術メーカーの大手であり、防衛・原発産業がサイバー攻撃の目標とされているのは明らかである。
三菱重工はF15の中枢部品、IHIは、防衛省向けの戦闘機のエンジンを製造、造船部門でも護衛艦を建造しており、原発の圧力容器や格納容器も製造。
ことほど左様に中国の脅威が目の前にあり、警察庁は「2010年9月だけでもサイバー攻撃の発信元の9割が中国だった」と公表し、直後に再びハッカー攻撃を受けた。なめられているのである。
この愚鈍とも言える三菱やIHIの対応ぶりに、強いいらだちを示すのは米国。もちろん、米国の反応は日本とまったく違う。
ペンタゴンが初公表した「サイバー戦略報告書」では、中国や北朝鮮が念頭に置かれて書かれており、サイバー攻撃による被害の深刻さに応じた報復に言及し、武力攻撃の可能性を排除していない。
また米国の民間シンクタンクは、各国政府、機関に対して行われたサイバー攻撃発信元は大半が中国海南島に拠点がある人民解放軍の部隊と断定している。
アメリカの軍需企業さえ強力なサイバー攻撃を受けて大量の重要情報が流出しており、米国防総省は国名こそあげないまでも、「高度な能力は国家に属する」と、それが中国であることを示唆した。
 
ことここにいたって、シラを切り続ける北京の中枢を陣取る指導者達は、いったいどういう神経の持ち主だろう?
中国外務省の洪磊報道官は9月20日の記者会見で、「中国が攻撃の発信源であるとの非難は根拠がなく、ネットのセキュリティー対策に関する国際協力を進める上で、ためにならない」と述べて中国の関与を強く反論した。
そのうえで、「中国も海外からのサイバー攻撃の主要な被害国の一つであり、中国政府は各国と積極的に協力し、サイバー攻撃を含むネット犯罪を取り締まりたい」と平然として嘯いた。
杜父魚文庫

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