8414 モノが言えなくなった日本 渡部亮次郎

日米関係はことほど左様に悪化している。大統領に会っても日本の首相は対等にモノが言えなくなっている。これ程、日本の立場を悪くしたのが鳩菅両首相だったのだ。
しかし、国民レヴェルでは、日米関係の悪化をそこまで想像もしていないことを示すのが以下の投書である。
<恰も参勤交代かの如くに、我が国の総理大臣はアメリカに大統領のご機嫌伺いに行っているように見えます。あの様子では臣下のようにしか見えません。国際関係としては鳩山は対等だと言っていましたが、実質はそうではないのですか。
今回も新参の総理大臣はわずか30分の会談で、かなり一方的に?改善要求を突きつけられた感があります。これらの要求、就中、普天間は鳩菅の負の遺産で仕方がないとは思います。だが、我が国からアメリカ側に何か要求することは外交上非礼なのでしょうか。
例えば、
①貴国が意識的な金融緩和策でドル安を推し進めて、輸出を推進しようとする策で、我が国の輸出産業のみならず産業界全体がドル安=円高の継続的に苦しめられている。是非、貴国の景気を回復する政策を推し進めて、この我が国を悩ます通貨政策を改善願いたい。
②日本向けの牛肉の輸出の振興を図りたいのならば、全頭検査並みに品質の向上を図ると共に、そのための労働力の質を高め、品質管理に遺憾なきを期して頂きたい。現在の不安定な品質では我が国の消費者を満足させられないくらいはご承知ではないか。
③(到底無理でしょうが)自国の製品の販売を促進したいがために、例えば日本の自動車に謂われなきクレームを付けるような策を講じないで欲しい。
と言うような事柄を要求してはいけないものでしょうか。過去の理不尽なセクハラ裁判にしても、明らかに不当だったにも拘わらず、国として何ら産業側を擁護しなかったために、アメリカ側は「何を言っても大丈夫」という、いわば「これを言って失うものはない」的な高飛車な姿勢でした。
私には日米間の微妙な外交関係は解りませんが、こういう事柄を主張すると何か重大なものを失うのでしょうか。嘗ての繊維交渉などは堂々としていた印象があるのですが。>(前田 正晶)
首脳会談とはいえ、いわば話し合いなのだから、まして「対等」を謳う「話し合い」なのだから、自由に話し合えるもの、と解釈するのが普通である。
だとすれば、前田さんご指摘のようなことが議題に上って当然、それを敢えて言わないのは野田首相の「萎縮」ではないかとの疑念が生ずるのは当然である。
しかし実は首脳会談となれば、そうはいかないのだ。首相が萎縮したのではない。日米関係の現状は、鳩・菅の食い散らかしの結果、双方対等なんかではなく、日本が下座に置かれている始末なのだ。
特に普天間移転問題では、オバマ大統領が共和党から「監視」されている状態にあり、その分、日本政府に対していわば居丈高な態度を隠さない状態になっている。この点は鳩山に特に責任がある。如何に厚顔無恥を決め込んでも取り上げる議題について発言できる官僚はいま不在である。
「話し合い」とはいえ、国家間の公式会談となれば、そこでなされた約束は条約に準じた約束となる。したがって事前に専門家による折衝が行なわれる。民主党がいかに政治優先と避けんでも、外務省抜きに大統領とは太刀打ちできない。
日本外務省とアメリカ国務省との間で事前折衝が官僚によっておこなわれる。ここでは両首脳が会談で取り上げる議題について細かく折衝がおこなわれる。日本がアメリカに対して真に対等な位置が確保できている状態なら、前田さんご指摘の会談議題になっただろう。
しかし、普天間という宿題を済ませていない立場の日本はいまや対等にモノを言える立場には無い。なんでもかんでも「対等」と誤解して両国の友好関係を目茶くちゃにした鳩山。それを戻す努力を怠った菅の罪はこれだけ大きいのだ。
嘗ての繊維交渉とは沖縄を縄で買ったと称されたとおり、大平・宮澤と2代に亘る通産大臣が解決できず、当時の首相佐藤栄作はニクソン大統領の前で肩を顰めたものだった。
そこで最後に登場した通産大臣は田中角栄。いきなり2000億円でわが国繊維業界を買占め、織機をすべて潰して解決した。
流石のニクソンも角栄を絶賛、沖縄返還は本決まり。福田を引き連れての首脳会談で後継者として紹介しようとしたがニクソンが隣席に招きいれたのは通産大臣角栄だった。あの「角福戦争」がここで事実上決着したのであった。
対等な日米関係とはお互いに「宿題」を解決してこそはかれるもの。普天間が解決するまで日米は対等な関係は望めない。(敬称略)
杜父魚文庫

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