8415 台湾はなぜ新鋭戦闘機を求めるのか 古森義久

台湾の安全保障についてのレポートの続きです。日本ビジネスプレスの古森義久の連載コラム「国際激流と日本」からの転載です。 原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/23043
中台の軍事バランスが崩れている蔡英文氏のAEIでの「台湾海峡と世界と」という題の演説は超満員だった。蔡氏は台湾の政治や経済をグローバルな視点から語り、特に台湾と米国と の関係の説明に熱を込めた。米台両国は相互に「戦略的パートナーシップ」を構築しつつあるというのだ。台湾はなにしろ安全保障面で米国を最大の頼りにして いるのである。
その安全保障と対米関係について、蔡氏は以下の点を強調しながら語るのだった。
「台湾住民は自己の主権に基づき、中国とは政治体制の異なる現在の国家体制を維持していくことを願っています。台湾の将来はすべて住民の自由な意思によって決められるべきです」
「台湾の平和と安定は、安全保障への誓約と抑止によって支えられなければなりません。ところが近年は中国が軍事力を大幅に増強しています。特に海 軍力の強化により台湾海峡の軍事バランスは中国側に有利に傾きすぎ、中国の軍事力行使を抑止する台湾側の能力は信頼性をなくしています」
「しかし国民党の馬英九政権は国防努力を怠っています。私が来年の選挙で政権を取れば、台湾の適切な防衛を実現するため、米国に新鋭のF16戦闘機を含む近代的な兵器類の売却を求めていきます」
蔡氏がこうして提起した中国の軍拡は、日本にとっても同様の懸念を生む動きである。この点では台湾と日本の安全保障政策は合致するわけだ。つまり、現在の平和と安定が中国の著しい軍事力増強により揺さぶられるという認識である。
台湾が米国に売却を求める新型戦闘機
一方、米国は「台湾関係法」によって「台湾の安全保障は米国にとっても重大な懸念の対象である」と明言している。台湾の防衛に必要な兵器類は売却する責務があるという意味に解釈される規定である。
台湾は主力戦闘機として1990年代半ばから米国製の「F16」戦闘機を合計160機ほど購入した。これらはF16の中でも「A/B型」と呼ば れ、現在では旧式となった。台湾政府は2006年頃からF16戦闘機「C/D型」を新戦力として60機以上、新たに購入することを米国に対し希望するよう になった。だが、米国政府は中国の反発を懸念して台湾のこの求めに応じなかった。蔡氏の要請はこうした背景の中で改めて表明されたのだ。(つづく)
杜父魚文庫

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