8422 オバマ政権が台湾に新鋭機を売らない理由 古森義久

台湾の安全保障に関するレポートの紹介を続けました。日本ビジネスプレスの古森義久の連載コラムからの転載ですが、このコラムを書いた直後にオバマ政権が台湾への新たな兵器類の売却を公式に決定して、発表しました。このレポートで「非公式」として報じたとおりの内容です。
オバマ政権はやはり台湾の懇願を聞きませんでした。F16戦闘機の新型を売らなかったのです。それはなぜなのでしょうか。
               =======
だが、その数日後にワシントンで流れた非公式情報では、オバマ政権はやはりF16戦闘機の新鋭C/D型は台湾には売らず、A/B型のアップグレードで抑止力の向上を求めることにしたという。蔡氏のワシントンでの懇願は実現されなかったようなのだ。
一方の中国は戦闘機を合計1400機ほど保有し、どんどん新型機を導入している。
台湾海峡に向けては、旧ソ連から購入した「スホイ27」「スホイ30」という戦闘機に加え、「殲-10型」から、最新鋭のステルス戦闘機「殲-20型」までを配備しようとしている。蔡氏は中国空軍のこうした戦闘能力の増強に対応してF16 C/Dを求めたわけだ。
米国の議会では、台湾の空軍の窮状への理解は広範に存在する。2011年8月には下院議員百八十数人、上院議員45人が連名でオバマ大統領に書簡を送り、中国軍への抑止として台湾にF16 C/Dの売却を許可することを要請した。
この230人近くの連邦議員たちは民主、共和両党を含む超党派だった。このためオバマ政権がもしF16 C/Dを今回、台湾に売らないことを正式に決めれば、米国議会からは多数の反対の声が巻き上がることとなる。蔡氏にとっても、「ワシントンの台湾の友人た ち」の影響はときに極めて大きいから、なお議員たちの動きに希望を託すこととなろう。
台湾が日本に求める安全保障上の連携強化
蔡氏はまた次のような発言もした。「台湾は単に台湾海峡の情勢を気に病むだけでなく、米国との他の地域での連携、そして東アジア地域全体での米国とその同盟諸国との連携を強化することにも努力を注がねばなりません」
表面だけ見れば、この言葉はごく当然と受け取られるだろうが、よく吟味すると、蔡氏がアジアでの米国の同盟諸国、つまり日本にも安全保障上の連携強化の手を差し伸べていることが分かる。日本としても無視すべきではない外交触手だと言えよう。
講演が終わって台湾の記者団たちとも言葉を交わす蔡氏に「日本の記者ですが・・・」と声をかけると、蔡氏の表情が一瞬、目に見えてなごやかになった。日本への親近感がうかがわれる反応だった。
こうした一瞬の印象だけで、政策面を推察することは危険だが、日本には少なくとも日頃から連帯感を持っているという感じの対応だった。こんなところにも日本にとっての台湾の重要性がにじむように感じたわけである。(終わり)
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました