やはり”出来レース”だった。一時は西側メデイアに来年3月の次期大統領選を巡っては「メドベージェフ大統領が再選を目指し、プーチン首相(前大統領)との決戦投票になる」という観測が流れていたが、モスクワで開かれた最大与党「統一ロシア」の党大会で、メドベージェフ大統領が演説でプーチン首相を次期大統領に推薦し、プーチン氏がこれを受け入れた・・・プーチン氏はメドベージェフ氏を首相にする考えを表明した。
ロシアの「双頭体制」はポストを交換して続く。しかもメドベージェフ大統領時代にロシア大統領の任期が次期から4年から6年に延長された。プーチン氏の再登場のための”お膳立て”だったといえる。
<【モスクワ田中洋之】24日に開かれたロシアの政権与党「統一ロシア」党大会で、次期大統領にプーチン首相の返り咲きが固まった。最高実力者プーチン氏の大統領復帰は既定路線とみられていたが、国民の関心を引き付けるため党大会での公表というサプライズが演出された。一方、「強硬派」プーチン氏の再登板で欧米との関係が緊張に向かう可能性もある。
◇メドベージェフ氏は首相に
プーチン氏は08年に2期8年間務めた大統領を退任したあと首相に就任し、後継指名した腹心のメドベージェフ大統領と2人で政権を担う「双頭体制」を敷いてきた。しかし、プーチン氏が国家運営を主導してきたのが実情で、メドベージェフ大統領が憲法改正で大統領任期を4年から6年に延長したのもプーチン氏復帰に備えた措置との見方が出ていた。
来年3月の次期大統領選を巡っては、メドベージェフ氏が再選出馬に意欲を示し、内外政策でプーチン首相との「隙間(すきま)風」も指摘されていたが、プーチン氏は24日の演説で「将来についてメドベージェフ氏と数年前から合意していた」と述べ、自身の立候補が既定路線だったことを認めた。
これまで発表されなかったのは、メドベージェフ大統領がレームダック化するのを避けるためだったとみられる。また、12月4日投票の下院選で、統一ロシアが支持率低下のため議席減が予想されるなか、党首であるプーチン氏の大統領復帰を前提に選挙を戦ったほうが有利と判断した可能性がある。
プーチン氏が大統領に復帰する場合、メドベージェフ氏の処遇が最大の問題とされていたが、新政権で首相に指名し、大統領として進めてきた「近代化」政策を継続させることでメンツを保つ形となった。
プーチン氏としてはメドベージェフ氏に大統領をもう1期やらせる選択肢もあったが、自ら誘致した12年のウラジオストクでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)や14年のソチ冬季五輪を大統領として成功させたい、という思いがあったとの見方がある。
ロシア国内ではプーチン氏の大統領復帰を歓迎する声が強い。しかし、強権的なプーチン路線の継続には「ロシアの停滞を招く」(ゴルバチョフ元ソ連大統領)など否定的な見方もある。プーチン、メドベージェフ両氏が大統領と首相ポストを交換して政権を継続することについても「権力のたらい回し」との批判が出そうだ。
一方、外交面で、メドベージェフ大統領はプーチン政権時代に悪化した米国との関係を「リセット」するなど、穏健・リベラルなイメージで欧米諸国に受け入れられてきた。しかし、プーチン氏の大統領復帰でロシアと欧米の関係が再び険悪化する恐れもある。
対日関係では、北方領土問題について従来の強硬路線を継続するとみられる。
◇ウラジーミル・プーチン◇
52年、旧レニングラード(現サンクトペテルブルク)出身。旧ソ連国家保安委員会(KGB)の対外情報部の勤務などを経て、99年8月に首相就任し、同年12月に大統領代行を兼務。00年5月に大統領就任。退任後の08年5月から首相を務める。(毎日)>
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8423 プーチン大統領・メドベージェフ首相の双頭体制へ 古沢襄

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