田中角栄は小学校しか出ていなかったが、手段は知らぬが、たいしたカネを掴み、東京の高級住宅地に「目白御殿」を構え、首相にまでなった。世間は羽柴秀吉になぞらえ、「今太閤」と持ち上げた。
マスコミも「コンピュータ付きブルトーザー」とは囃し立てたが、彼が自らロッキード事件で失脚すると、闇の帝王と言って見捨てた。
その子分が小沢一郎だと言うから、知らない人は、小沢もまた金を集め、首相を狙うだろうと想像するが、私は違うと思う。角栄のカネ集めは権力奪取が目的だったが、小沢のカネ集めは、そのこと自体が目的なのである。
角栄は常々「金持ちは汚い」が口癖だったが、小沢のように金払いには汚くなかった。しかし、小沢のはカネが目的なのだから、田中が生きていたら、小沢を嫌ったことだろう。
角栄の生き方と小沢のそれとは完全に異なる。
「世間は金持ちについて、皆誤解している。金持ちは金を沢山持っているから他人に呉れると思っているが、違う。金持ちはカネを手放さないから金持ちでいられるんだ。金遣いが汚いから金持ちなんだ。
小金を溜めた金持ちは、だからこそ、カネを増やすのが好きになって周りから嫌われるようになる。だがそれに気を遣っていたらカネは溜まらない。金持ちは増やしたくなってカネを溜める。
カネに汚くナルカラカネが溜まる、金持ちになる、これが現実だ」。
角栄は政治家。味方(派閥)を増やさなければならないから、カネをじゃんじゃんばら撒いた。越山会の金庫番女性は、官僚の引き出しを勝手に開け、金束を押し込んでまわった。返しに北官僚は一人も無かった。それでとうとう総理になった。
官僚でも記者でもおんなじだ。飲ませ食わせは無駄なこと。小便すれば忘れてしまう。ゲンナマをつかませないと駄目なんだ。カネをわたさんと人は買えない。
一度カネを受け取った奴はもう道徳心なんて失くなってしまうものなんだ。政治家も官僚も記者もおんなじ、と言い続けた。
小沢ハカネが目的で権力を握ろうとし続けるが、権力を目的としたカネ使いはしていない。【敬称略】
杜父魚文庫
8455 金持ちはカネに汚いと角栄 渡部亮次郎

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