野田政権の誕生から1カ月です。 期待は日ごとに失せていきます。逆に欠陥や弱点が次々に浮かびあがってきます。産経新聞の1カ月総括をみましょう。
<<■野田政権、終わりなき忍耐 1カ月“通信簿”>>
■増税一直線/普天間停滞/「政治とカネ」沈黙
野田佳彦首相は就任30日目の1日、東京・赤坂の衆院議員宿舎から首相官邸に隣接する首相公邸に引っ越した。前日の民主党両院議員総会では「おなかの中 に『退任』ではなく『大忍』という文字を書き…」と、1カ月の政権運営を振り返った首相。確かにこれまでの“通信簿”を見ると、増税路線による国民負担増 や米国から指摘された米軍普天間飛行場移設問題の解決など課題ばかりが積み重なった。今後も「忍耐」の政権運営が続きそうだ。(酒井充、坂本一之)
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◆甘い詰め露呈
増税路線まっしぐら-。内政面ではこんなイメージがすっかり定着した。首相は9月30日の記者会見でも「負担を次の世代に先送りするのではなく、今を生きる世代全体で連帯して分かち合う考え方」を主張。政府・与党がまとめた11・2兆円の臨時増税案に理解を求めた。
ただ、増税幅を圧縮するための税外収入の見積もりでは詰めの甘さを露呈。前原誠司政調会長が「政府案より2兆円積み増した7兆円」と断言するのに対し、官邸や財務省側は7兆円への積み増しを「目標」や「見込み」と位置づける。
増税批判の大きさに今さらながら気づいたのか、方向転換を余儀なくされようとしている政策も。財務相時代にゴーサインを出した埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎の建設(105億円)について、首相は記者会見で凍結を示唆した。
◆いらだつ米国
外交面はどうか。9月の日米首脳会談では、オバマ大統領に米軍普天間飛行場の移設問題について「結果を求める時期が近づいている」と迫られた。大統領は 会談後、「彼となら一緒に仕事ができる」と漏らしたとされるが、移設関連費の支出に反対する米議会の圧力は次第に強まっており、大統領のいらだちは頂点に 達しつつある。
それでも首相は、移設に反対する沖縄の説得について、9月29日の参院予算委員会で「いつまでにと明示することは困難だ」と先送り姿勢を示唆。環太平洋 戦略的経済連携協定(TPP)の交渉参加問題では、近く関係閣僚の議論を再開するが、着地点を見いだすのは容易ではない。
ロシアは首相就任直後に爆撃機が日本列島を周回し、北方領土には高官が上陸した。中国も東シナ海での海洋調査船の活動を活発化させているが、政府は明確に抗議しなかった。首相の「安全運転」が外国に付け入る隙を与えている。
◆外国人献金は
政権のアキレス腱(けん)となりそうなのは、やはり「政治とカネ」の問題だ。
首相の資金管理団体が在日韓国人から30万円の政治献金を受けていた問題では、9月26日の衆院予算委員会で「外国の方との認識は持っていなかった」と釈明した。しかし、いまだに調査結果を発表していない。
元秘書3人が政治資金規正法違反で有罪判決を受けた民主党の小沢一郎元代表の証人喚問についても「司法への影響も踏まえると本当に妥当なのかどうか慎重に考えなければいけない」と後ろ向きだ。
菅直人前首相の資金管理団体が日本人拉致事件容疑者の長男が所属する政治団体「市民の党」の派生団体に計6250万円の巨額献金をしていた問題でも、首相は党としての調査を拒み続けている。
ある閣僚経験者は「どじょうのようにいつまでも顔を土の中に入れているようでは、政権は長続きしない」と警鐘を鳴らす。ちなみに、首相本人も自らを「どじょう」に例えたことを最近になって悔やんでいるという。
杜父魚文庫
8460 野田政権のアキレス腱 古森義久

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