8500 すずき大和「まんが紀行 奥の細道」 古沢襄

10月12日は松尾芭蕉忌。友人の漫画家・すずき大和さんが2003年に青山出版から出した「まんが紀行 奥の細道」を本棚から引っ張り出して読んでいる。杉浦幸雄さんのお弟子さんだったすずき大和さんは、この仕事のために芭蕉が歩んだ奥の細道の全行程六百里(2400キロ)を辿ったというから半端ではない。
漫画で松尾芭蕉を題材にするのなら”隠密・芭蕉”の方が売れると思うのは私のような山っ気のある者の不心得な考え・・・だが芭蕉の出生地は忍者の里・伊賀であるし、「奥の細道」六百里を約150日で歩いたなかみをみると、当時の日本人としては異常な速さの歩き方などから忍者説は一部に残っている。
すずき大和さんは東北の出身。福島県伊達町に生まれてNHKテレビ美術に11年間在籍していた。少年の頃から「奥の細道」に惹かれていて、漫画で「奥の細道」を描くという途方もないことを考えていたという。
だから「まんが紀行 奥の細道」は意外とお堅い漫画本になっている。
月日は百代の過客にして 行きかふ年もまた旅人なり
行く春や鳥啼き魚の目は泪(なみだ)
同行者は弟子の河合曾良ひとり。江戸を出て二夜が過ぎ二十里(80キロ)を歩いたが、室の八島の神社で奥州の旅の安全を祈願している。そこから日光へ。黒髪山を望んだ弟子・曾良の一句。
剃り捨てて黒髪山に衣更(ころもがえ)
曾良の名は河合惣五郎。長島藩主松平康尚に仕えた元武士で弓術にたけ、医術の心得もある。奥の細道の旅に出る際に髪を剃り、僧衣に姿を変えた。曾良の没後二百数十年を経て昭和18年(1943)に「曾良旅日記」が発見された。
「奥の細道」の行程を詳しく知る貴重本で、天理大学図書館に重要文化財として保存されている。芭蕉は芸術性の極めて高い句風を確立し”俳聖”として世界的にも有名だが、曾良も特に優れた高弟10人「蕉門十哲(しょうもんじってつ)」の一人という説がある。
すずき大和さんの「まんが紀行 奥の細道」では旅路での芭蕉と曾良のやりとりを描きつつ芭蕉の名句を散りばめていく。小学校の高学年から読める「奥の細道」なのだが・・・。
杜父魚文庫

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