8546 北朝鮮崩壊がなぜ日米離反につながるか 古森義久

北朝鮮の政権が崩壊した場合のアメリカや中国、日本の対応についての報告を続けます。北朝鮮が崩壊すれば、日米両国にとって共通の敵なのですから、本来なら日米両国がともに利益を得て、日米同盟もより強化されるという効果を生むのではないか。こんな観測が一般的かもしれません。
しかしこのアメリカ国防大学研究所の調査はそうではなく、日米両国の間で食い違いが起きて、離反さえ起きるだろうというシナリオを描くのです。
なぜなのでしょうか。日本ビジネスプレスの古森コラムの今回分の最後です。原文へのリンクは以下です。
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/26028       
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・ 朝鮮半島に弱体の統一政権ができると、中国に対抗し得る勢力としての日本の立場が鮮明になり、日本自身がその状況を嫌がる。
・ 米国が北朝鮮の政権崩壊に対して行動を取る際、同盟国としての日本にも共同行動を要請すると、日本側がそれを忌避し、日米間の同盟の歩調が乱れる公算が大きい。
こうした予測も、日本が本来有する危機への複雑な体質を浮き彫りにしている。
日本は「平和憲法」を掲げる結果、軍事動向を含む危機に対しての対応 が極めて屈折しているのである。普通の国とは異なるのだ。その前提は、とにかく同盟国の米国に依存するという片務的な傾向だと言えよう。
日本国内は大混乱となり日米同盟にも大きな浸食が
さて、この国家戦略研究所の研究報告は、日本の対応にさらに踏み込んで、より具体的な予測を進めていく。いずれも北朝鮮の政権が崩壊したという想定での日本の動きである。
・ 日本国内は、まず北朝鮮での政治的混乱に起因する日本に対するミサイル攻撃への恐怖、在韓日本人の安全への懸念、日本国内の朝鮮総連などの動き、北朝鮮から押し寄せかねないボート難民への対処などにより、大混乱となる。
・ 日本政府が、北朝鮮に拉致された日本国民の行方追及を米国政府に要求すると、米国はそれに応じられず、日米離反の原因を生む。
・日本が北朝鮮の核兵器除去を米国に望むことは間違いないが、米国がそのために北朝鮮へ軍事介入することについては、日本は中国への配慮などから明快な結論が出せず、反対までしかねず、日米の摩擦を生む。逆に米国が北の核兵器をまったく取り除けないとなると、日本側の米国への信頼が減る。
・ 米国が韓国と一体になって北への軍事介入をする場合に、日本が軍事関連分野での支援をまったくせず、米国の失望を買って、日米同盟への大きな侵食が起きる。
要するに、日本の八方美人的な対外体質が、北朝鮮政権崩壊というような危機の際に表面にさらされる、ということだろう。
そんな帰趨が日米同盟の将来をどう変えていくのか。北朝鮮の異変が日本にも重大な変容を迫ることは確実だ。(このレポートはこれで完)
杜父魚文庫

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