8563 米韓同盟の強化で日米同盟がかすむ 古森義久

やはり米韓のきずなが強まると、日米のきずなの弱化がそれだけハイライトを浴びてしまうようです。日本の民主党政権の「日米同盟の深化」などというスローガンがありました。だがもう死語となったのでしょうか。
日米同盟はもうどうでもよいという政策的な立場をとるなら別ですけど、日米同盟は日本外交の基軸と言明しながら、そのための実際の行動はゼロというのでは、みっともない話です。
〔ワシントン=古森義久〕韓国の李明博大統領の米国公式訪問は米韓同盟のきずなの画期的な強化を印象づけ、期せずして日米同盟の弱化を浮かび上がらせた。
米韓日相互関係のそうした微妙な構造変化が20日、米側の元政府高官らにより論じられた。
ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」が主催した「李大統領訪米の米韓関係への影響」と題する討論会でブッシュ前政権の国家安全保障会議アジア上級部長だったマイケル・グリーン氏は李訪米が米韓両国間の同盟と経済の関係両方を強化するうえで大成功だったことを指摘し、「米国が対韓関係を強化すると日本を軽視したような印象がどうしても生まれる」とまず一般論を述べた。
(米韓合同軍事演習)
グリーン氏は「米国は日韓両国との同盟を同時に堅持したいのだから、対韓対日は決してゼロサムであってはならない」と語りながらも、「オバマ大統領が日本の民主党政権の鳩山、菅両首相らを相手に私的にも緊密な会談をする場合、鳩山氏らがルーピー(愚か)な発言をしないことが大前提となるが、その保証が残念ながらなかった」と日韓の指導者の基本姿勢の違いを指摘した。
元米国中央情報局(CIA)の朝鮮半島専門で現在はヘリテージ財団上級研究員のブルース・クリングナー氏は今回の李訪米による米韓首脳の交流は米韓同盟をこれまでで最も堅固にしたという評価を述べたうえで、「この成果は長年、米韓両国指導層が共通の価値観や戦略に立脚してきずなを強めた結果であり、この事実をぜひ日本も注目してほしい」と語った。
同氏は米韓関係の米日関係との相違として
①韓国にはフテンマはなく、在韓米軍に関する問題がない
②米韓は北朝鮮に対する戦略認識が一致している
③韓国は米国のイラクやアフガンでの安保行動に十二分に協力した
―ことなどをあげた。
そのうえで同氏は日本の政治リーダーシップについて「米韓自由貿易協定が今回、前進したが、日本の現指導層ではこの種の大きな措置はまずとれない」と批判をにじませ、「政治家としての野田首相への米国の期待は大きいが、日本側では野田氏がたとえよい思考や資質を持っていても、思い切った行動はとれないことを『理解して欲しい』と米側に述べるだけで、単なる逃げ口上の繰り返しとしてしかひびかない」とも述べた。
グリーン氏は「米国にとっての安保面での日本の重要性はなお大きく、オバマ政権が韓国との同盟強化を果たしたから、もう日本を含めてアジアの他の諸国との安保関係はこのままでよいと判断することは危険だ」と論評し、 日米同盟の現状への不満や懸念を明らかにした。
杜父魚文庫

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