アラブの春の影響を極度に警戒。ナエフ次期皇太子は「911はユダヤの陰謀」説を信じているらしい。サウジアラビアのサルタン皇太子が死去し(10月22日)、中東政治は次の皇太子が誰になるかと懸念している。葬儀には鳩山前首相が出席する。サウジ王室の規定では、皇太子候補は33人いるという。
しかしながら過半の見方は、サルタン皇太子葬儀後にナエフ・ビン・アブドル・アジス現内務大臣が、次期皇太子のポストに座るだろうと予測している。アブドラ国王は87歳、入退院を繰りかえしているため、次期国王にもっとも近いことになる。
ならばナエフ内務大臣とはいかなる人物なのか?イランに主導されるシーア派への警戒心が強度である、という点で観測筋は一致している。
ナエフ内務相は1973年から、じつに38年間、内務大臣の職務を履行し、秘密警察を統率する。サウジにおける最大の組織は13万人の軍隊と秘密警察、そのトータルは不明だが、二十万人前後と推定される。
ウィキリークスによって暴露された人物像は「頑迷なほどの保守派、だが驚くほどイデオロギー的には拘泥がなく、プラグマティスとでもあり、国家安全保障と社会の安定になみなみならぬ関心を持つが、プライベートな蓄財には興味が薄い」と米大使が09年十月にワシントンへ打電していたことが漏洩している。
とくに宗教の戒律重視で女性のベール着用違反を取り締まる「宗教秘密警察」を管轄する内務省のトップであるものの、だからといって「反米かどうかは曖昧。確実にこういう行動を取るという予測がまったくつけにくいが、911テロは、ユダヤの陰謀説に与する。論拠はハイジャッカー19名のなかの15名がサウジアラビア人という事実は“あり得ない”を信じ切っていたフシがある」(NYタイムズ、10月25日)。
ところが2003年にサウジアラビアでアルカィーダのテロ事件が発生するや、米国留学から帰った息子のムハンマドを内務副大臣に副え、徹底的な原因究明をさせた。
ワッハーブ派はスンニ派のなかの少数派だが、サウジアラビアの主流宗教。イデオロギー的にはエジプトの「ムスリム同胞団」と異なり、かなりの距離を置く。アラーの教えにどちらが忠実であるかは、宗教セクトの解釈の違いにあり、ナエフ次期皇太子は反米化親米かという色分けは、じつは意味を持たない。
来週、次期皇太子が決まり、アラブの春の衝撃波に激しく揺れる中東政治の中枢を担う。
杜父魚文庫
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