岡本行夫氏が日本の対外姿勢についての一文を書いています。TPPにも触れて、アメリカ陰謀説を排除しています。
TPPはアメリカが日本を貧しくするため、国民を分裂させるため、収奪するためのに進める企みだという主張、情けないですが、その反駁を岡本氏も書いています。
=======
<<【人界観望楼】外交評論家・岡本行夫 衰退させるか、反転か>>
クリントン米国務長官が最新のフォーリン・ポリシー誌に長文の寄稿をした。アメリカは、イラク・アフガニスタンを後にし、これからはアジア太平洋地域を 最重視していくという。まことに結構だが、同時にアメリカの同盟ネットワークの「アップデート」が必要だと指摘する。つまり同盟関係の見直しだ。そして、 アジア太平洋の「3つの巨人」が緊密に協力し、連携していくべきだと言う。3つの巨人とは、アメリカ、中国、インドであると。
日本が 入っていないと怒っても始まらない。日本の姿は確実に薄くなってしまっている。9月にフォーブス誌は、恒例の「アジアの最優良企業50社」を発表した。 2005年には日本企業が13社選ばれ、もちろんアジアで最多数だった。そのとき中国の会社は中国石油1社だけ。1990年代であれば日本企業が40社は 入っただろう。それが今年のランキングでは、中国企業が断トツの23社。続いてインド、豪州、タイ、インドネシアがそれぞれ複数社。それにシンガポール、 台湾、フィリピン、香港、マレーシア。日本企業は何社がリストアップされたか? 答えは「ゼロ」。つまり、アジアの最優良企業50社の中に、日本企業は一 つも入らない。
理由は簡単で、超円高をはじめとするいわゆる五重苦である。電力不足を加えれば六重苦。これで企業に国際競争しろというのは無理だ。詳述する紙数はないが六重苦のほとんどは政府が作り出したものだ。
そのひとつが、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を含めたFTA(自由貿易協定)ネットワークへの参加の遅れだ。日本のTPP参加には、感情的な反対 論も多い。「アメリカ陰謀説」も根強いが、いかがなものか。アメリカは、むしろ本音では、日本が交渉に参加して反対を連発し合意パッケージが小さくなって しまうことを危惧しているのではないか。TPPに参加しないで困るのは、ゼロ関税ネットワークからはじき出される日本であって、アメリカではない。内閣府 は、TPP加盟により、日本の成長は0・5%程度増加すると試算している。加盟しなければ輸出競争力が減る分、逆にマイナスになる。農業は手厚く保護し、 さらには品目によって除外交渉をすればよい。しかし、TPP不参加によって日本産業をさらに痛めつけ、日本経済を沈み込ませることは避けてほしい。
野田政権の行く手は大変だ。普天間問題はもはや解決不可能になった。現在の環境アセス手続きが仮に進んだとしても、その延長線上に移設実現があるわけでは ない。従来と異なり、沖縄は反対一色になった。キャンプ・シュワブの前に座り込むデモ隊を機動隊は実力で排除するのか。けが人が出れば沖縄は60年代の 「島ぐるみ闘争」に戻る。どう考えても出口がない。代替策はあるが、文字どおり政権の命をかけなければできないだろう。決断するのか、しないのか。しなけ れば日本の安全保障の基盤が揺らぐ。
政府は2年間という短期間のうちに、この国家の実力を大きく剥奪した。日本の現場には素晴らしい復元力がある。勤勉でひたむきな国民性がある。このまま衰退させるのか、反転させるのか。政治の決断ひとつである。(おかもと ゆきお)
杜父魚文庫
8605 TPPアメリカ陰謀説を排す 古森義久

コメント