在日米軍は予想以上の規模で縮小されるだろう。911以来の十年間で米国の国防費は4000億ドル台から7000億ドルへと膨張した。
これが米国の予算からフレキシビリティを除去し、きわめて窮屈なものにした。国債金利3000億ドル分をあわせると、ほかのことにカネを振り向けることは不可能に近い。
レオン・パネッタ現国防長官は、もともと予算局長、日本で言えば大蔵省主計官(財務省財務官)、換言すれば、片山さつきが防衛大臣に就任し、ばっさばっさと防衛予算を削ってゆく様を連想すると良いだろう。
とはいえパネッタは軍隊歴もながく、陸軍中尉で退官、その後、政治家秘書、弁護士を経験し下院議員に。議員歴も長く16年間、最後は予算委員長だったが、この経験を買われ、行政管理予算局長(準閣僚級)となる。
クリントン政権下で大統領首席補佐官。オバマ政権発足とともにCIA長官に抜擢され、2011年四月、引退するゲーツと交替して国防長官。いわばベテラン政治家である。
大幅な予算削減に乗り出した。パネッタはNYタイムズとのインタビューで、次の十年間に4500億ドル削減を上回る5000億ドルもの予算削減をするとし、その大枠を語った(同紙、11月8日付け電子版)。
それに拠れば、「効率重視、有効な戦力の維持」を目標として、
第一に兵力を57万人から52万人に削減する。別途「海兵隊」を202000人から186000人へ削減する。
第二に不必要な基地を閉鎖する。内外を問わず基地の効率的再編を実現する。
第三に軍人恩給という「聖域」にも削減対象を含める。
第四に中間目標として2017年までに国防予算全体を5225億ドルとする。
第五に新兵器の開発並びに配備の予算を削減する(となると次期戦争機の開発予算も削減される)。戦略核兵器削減のスピードアップを図る。
第六はNATOに駐留する米軍兵力の劇的削減。国際的な軍事的脅威は中東とアジアへ移行したとする認識から欧州の基地の閉鎖も「聖域」対象を外す。
第七に、そうはいうもののサイバー攻撃対策費用、特殊部隊の維持、ドローン(無人攻撃機)などの維持拡大は削減対象に含まないとする。
現実に現行予算7000億ドルのうち、通常経費は5300億ドルとされ、余分の1700億ドルがイラク、アフガニスタン戦争のための追加措置である。
このうち年内にイラクから撤退するので、予算面では比較的大鉈をふるえる分野だが、とくに議会が反対に回るのは自分の選挙区にある基地の閉鎖だ。
議会からの削減反対圧力を、パネッタが強くはねのける政治力があるか、どうかが問われる。
在日米軍ははやくからグアム以東への撤退がきまっているように、いずれ日本の防衛は根底的改編を余儀なくされるだろう。
杜父魚文庫
8631 パネッタ国防長官は予算局長出身、国防費削減に大鉈を準備 宮崎正弘

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