ロシアは昔も今も世界の脅威だ。中共と並んで民主主義のない独裁国家である。政敵は殺されるか刑務所行きだ。隙あれば隣国に攻め込むから油断できない。
日露戦争の日本の勝利は白人による有色人種支配を終わらせるきっかけとなった世界史的な事件だった。孫文は亡くなる3か月前の1924年11月28日、神戸で「大アジア主義」と題した講演でおおよそこう語っている。
<わがアジアはとりもなおさず最も古い文化の発祥地であります。アジアは一度は衰微しましたが、30年前に再び復興し来たったのであります。
然らばこの復興の起点は一体どこに在りましたかと言うに、それは即ち、日本が30年前に外国と締結しました一切の不平等柔約を撤廃したことです。日本の不平等条約撤廃の其の日こそ、我がアジア全民族復興の日であったのであります。
しかしながらアジア諸民族をして全体的にそれ程大なる感動を受けさせることができなかったのであります。それより10年を過ぎて日露戦争が起り、その結果日本が露国に勝ち、日本人がロシア人に勝ちました。これは最近数百年問におけるアジア民族の欧州人に対する最初の勝利であったのであります。
この日本の勝利は全アジアで影響を及ぽし、アジア全体の諸民族は皆有頂天になり、そして極めて大きな希望を抱くに至ったのであります。この事に付いて私が親しく見ました事をお話し申上げましょう。
日露戦争の開始されました年、私は丁度欧州に居りましたが、或る日東郷大将が露国の海軍を敗った、ロシアが新に欧州よりウラジオストックに派遣した艦隊は、日本海において全滅されたと言うことを聞きました。この報道が欧州に伝わるや全欧州の人民はあたかも父母を失った如くに悲み憂えたのであります。
暫くして私は船でアジアに帰ることになり、スエズ運河を通ります時に、沢山の土人が、その土人はアラビヤ人であったようですが、私が黄色人種でありますのを見て、非常に喜び勇んだ様子で私に「お前は日本人か」と問いかけました。
私は「そうではない。私は中国人だ。何かあったのか、どうしてそんなに喜んで居るのか」と問いましたところ、彼等の答えはこうでした。
「俺達は今度非常に喜ばしいニュースを得た。何でも日本はロシアが新に欧州より派遣した海軍を全滅させたと言うことを聞いた。この話は本当か。
俺達はこの運河の両側に居て、ロシアの負傷兵が船毎に欧州に送還されて行くのを見た。これは必定ロシアが大敗した一風景だと思う。以前我々東洋の有色民族は何れも西洋民族の圧追を受けて苦痛を嘗めていて、全く浮かぶ瀬がないと諦めていた。
が、今度日本がロシアに打ち勝った。俺達はそれを東洋民族が西洋民族を打敗ったと見なすのだ。日本人が勝った。俺達はその勝利を俺達自身の勝利と同様に見るのだ。これこそこおどりして喜ぶべきことだ。だから俺達はこんなに喜んでいる、こんなに喜んでいるのだ」と言うことでありました。
今私が大アジア主義を講演しますに当って述べました以上の話は、どんな問題であるかと申しますに、簡単に言いますと、それは文化の問題であります。東方の文化と西方の文化との比較と衝突の問題であります。
東方の文化は王道であり、西方の文化は覇道であります。王道は仁義道徳を主張するものであり、覇道は功利強権を主張するものであります。仁義道徳は正義合理によって人を感化するものであり、功利強権は洋銃大砲を以て人を圧追するものであります。
我々が大アジア主義を説き、アジア民族の地位を回復しようとするには、ただ仁義道徳を基礎として各地の民族を連合すれば、アジア全体の民族が非常な勢力を有する様になることは自明の理であります。
それならば我々は結局どんな問題を解決しようとしているのかと言いますと、圧迫を受けている我がアジアの民族が、どうすれば欧州の強盛民族に対抗し得るかと言うことでありまして、簡単に言えば、被圧迫民族のためにともに不平等を撤廃しようとしていることであります。
我々の主張する不平等廃除の文化は、覇道に背叛する文化であり、また民衆の平等と解放とを求める文化であると言い得るのであります。
貴方がた、日本民族は既に一面欧米の覇道の文化を取入れるとともに、他面アジアの王道文化の本質をも持っているのであります。今後日本が世界文化の前途に対し、西洋覇道の鷹犬となるか、あるいは東洋王道の干城となるか、それは日本国民の詳密な考慮と慎重な採択にかかるものであります>
満洲国建国の立役者と言われる石原莞爾は戦後の1947年に著した「新日本の建設」で、この講演の結びに触れ、孫文は「日本の大陸政策に対しひそかに厳重な抗議を提出したのであった。日本人はこの忠言に耳をかさなかったのみか、支那事変勃発後も、自称大亜細亜主義者すら覇道の犬たる行為を反省せず、ついに今日の結果を招いたのである」と慨嘆している。
その“覇道の犬”がアジアを解放したことを石原は知らなかったからこんな弁になったのだろうが、今日の「覇道の狂犬」はロシアと中共だ。備えは万全か。
「危険が身に迫ったとき、逃げ出すようでは駄目だ。かえって危険が二倍になる。しかし、決然として立ち向かえば、危険は半分に減る。
可能な手段だけでなく、また安易な手段や誰もが考えつく手段だけでなく、困難な手段、不可能と思われるような手段まで考えておくことだ」(チャーチル)
杜父魚文庫
コメント