8675 米中関係の変容で日本はどうなるか 古森義久

アメリカの対中新軍事戦略によって米中関係が変わりつつある、ということは確実にいえるでしょう。ではこの米中関係の変質が日本にどんな影響を及ぼすのか。
米軍の対中「空・海戦闘」戦略についての報告のつづきです。日本ビジネスプレスの私の連載の転載ですが、この報告はこれで終わりです。原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/29275
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オバマ政権のパネッタ国防長官やクリントン国務長官は、イラクやアフガニスタン駐留の米軍が減った後は、アジア・太平洋に戦力の新たな力点を置く方針をすでに公表していたが、今回の説明はその具体的な目的や内容を明らかにしたことになる。
この「空・海戦闘」という新概念はすでに今年夏ごろから固まっていたが、オバマ政権全体としての中国への配慮から発表が延期されてきたという。
「このまま静観」という態度がいよいよ取れなくなったこの新戦略の説明にあたった米国防総省高官の1人は、「この新戦略は、米国の対中軍事態勢を東西冷戦スタイルへと変える重大な転換点となる」と強調した。米中両国が軍事面での対立状態を明らかにした構図が、米ソ両国が対立した東西冷戦に似ている、という意味だろう。
この変化は、従来の米中関係の安全保障の領域が変質したのだとも言えよう。米中関係が新時代に入ったとも表現できる。
米中両国間ではこれまで中国の軍拡が顕著であり、米側は懸念を深めていたが、それを具体的な政策や戦略へと反映させるには至っていなかった。
だが、中国に対してソフトな姿勢を保つことに努めたオバマ政権も、ついに軍事的な対応策を示さざるを得なくなったのである。その理由は、中国側の軍事増強志向をもう黙視してはいられないと判断したということだろう。だから、米中関係の変容とか新時代という形容もそれほど誇張とはならないというわけだ。
米中軍事関係に詳しいラリー・ウォーツェル氏は、「オバマ政権は中国の軍拡に懸念を深めながらも、中国の反発から米中関係全体が悪化することを恐 れて、この新戦略を明示することをためらってきた。だが、ついにこのまま静観という態度が取れなくなったのだろう」と述べて、「空・海戦闘」戦略の公表を 歓迎した。同氏は議会政策諮問機関の「米中経済安保調査委員会」の委員を長年務める中国軍研究の専門家である。
ウォーツェル氏は、この新戦略の結果、西太平洋での米海軍の存在が拡大するとともに、沖縄駐留の海兵隊の役割への期待も大きくなるとの予測も明らかにした。日本としても、必ず影響の表れる米軍の新戦略だと言えよう。
杜父魚文庫

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