自称・安全保障は素人大臣こと一川保夫防衛相が16日夜、民主党の高橋千秋参院議員の政治資金パーティーへの参加を優先し、ブータンのジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会に欠席していたことが17日の参院予算委員会での自民党の宇都隆史氏の質問で取り上げられました。
一川氏は一応、「軽率だった。申し訳なく思い、反省している」と陳謝したわけですが、いかにも言葉だけですね。このパーティーでの一川氏の発言を、坂本一之記者がメモで送ってくれたので紹介します。
「実は今日は大事なブータンの国王が日本に来ておられて、それが今宮中で催し物があるんですけれども、他の大臣はみんなそちら行きましたけども、私はこちらの方が大事だと…(拍手)」
拍手をするパーティーの客たちもどうかと思いますが、国賓を招いての宮中晩餐会に国務大臣として正式に呼ばれているにもかかわらず、同僚のパーティーの方が優先だというわけです(本人は晩餐会へはもともと欠席の通知は出していたと言っていますが)。そして、わざわざ口に出さなければいいことを、堂々と得意げに語ってしまう…ため息が出るばかりです。
繰り返し書いていることなのですが、どうしてこう民主党議員は常識がないというか世間知らずというか、最低限のマナーや儀礼を守る気持ちが薄いというか規範意識が弱いというか、言わずもがなの一言が多いというか、内向きで外交・安保に疎いというか、とにかく失礼ですね。
で、一方のワンチュク国王はというと、きょうの衆院本会議で以下のような立派な演説をされました。あまりにも日本と日本人を礼賛する内容なので、今回の一川氏の振る舞いと比べて赤面してしまいそうです。
《皆様が復興に向けて歩まれる中、われわれブータン人は、みなさまとともにあります。われわれの物質的な支援は、つましいものだが、われわれの友情、連帯、思いやりは、心からの真実味のあるものです。われわれブータンに暮らす者は、常に日本国民を親愛なる兄弟、姉妹であると考えてまいりました。両国民を結びつけるものは、家族、誠実さ、そして名誉を守り、個人の欲望よりも、地域社会や国家の望みを優先し、また自己よりも公益を高く位置づける気持ちであります。
2011年は両国国交25周年の特別な年。しかし、ブータン国民は常に公式な関係を超えた特別な愛着を日本に抱いてまいりました。私は我が父とその世代の者が、何十年も前から日本がアジアの近代化を導くのを誇らしく見ていたのを知っています。すなわち、日本は開発途上だったアジアに進むべき自覚をもたらし、日本の後に続いて、世界経済の最前線に踊り出た数多くの国々に希望を与えてきました。日本は過去にも現代もリーダーであり続けます。このグローバル化した世界で、技術と革新の力、勤勉さと責任、強固な伝統的価値の模範であり、これまで以上にリーダーにふさわしいのです。
世界は常に日本のことを、大変な名誉と誇り、歴史に裏打ちされた誇り高き伝統を持つ、不屈の精神、断固たる決意、そして何事にも取り組む国民、知行合一、ゆるぎない強さと気丈さを合わせ持つ国民であると認識してまいりました。これは神話ではなく、現実であると申し上げたい。
近年の不幸な経済不況、3月の自然災害への対応にも示されている。みなさま、日本、日本国民の資質を示された。他の国であれば、国家をうちのめし、打ち砕き、秩序、大混乱、悲嘆をもたらしたであろう事態に日本国民のみなさんは最悪の状況下でさえ、静かな尊厳、自信、規律、心の強さを持って対処された。文化、伝統、価値にしっかりと根付いたこのような卓越した資質の組み合わせは、われわれの現代の世界で他に見いだすことは不可能です。すべての国がそうありたいと切望しますが、日本人特有のものであり、このような価値観や資質は、昨日生まれたものではなく、何世紀も歴史から生まれてきたものなのです。それは数年、数十年で失われることはありません。
そうした力を備えた日本にはすばらしい未来が待っていることでしょう。日本は歴史を通じてあらゆる逆境から繰り返し立ち直り、世界で最も成功した国のひとつとして地位を築いてきました。さらに注目するべきは、日本がためらうことなく、世界中の人々と自国の成功をわかちあってきたことです。私はすべてのブータン人にかわり、心からお話しています。世界は日本から大きな恩恵を受けるであろう。偉大な決断、静かな尊厳と謙虚さを兼ね備えた日本国民。ブータンはみなさんを応援し、支持してまいります。ブータンは国連安全保障理事会の議席拡大の必要性だけでなく、日本がその中で主導的や役割を果たさないといけないと考えております。
ブータンの成長と開発における日本の役割は特別なものです。日本から貴重な援助だけでなく、励ましもいただいてきました。日本国民の寛大さ、より次元の高い自然の絆、精神的な絆でブータンは常に日本の友人であり続けます。日本はブータンではもっとも重要な開発パートナーだ。感謝の意を伝えられることができて大変うれしい。両国民の間の絆をより強め、不断の努力を行うことを誓います。
改めて、ここで、ブータン国民から日本の皆様へ祈りと祝福を伝えます。列席のみなさま、簡単ではありますが、私どもの国の言葉で話したいと思います…(しばし通訳ストップ)…。今、私は祈りを捧げました。小さな祈りですが。日本、日本国民が常に平和と安定、調和、これからも繁栄を享受されますように。今日はありがとうございました(盛大な拍手)(了)》
果たして、ブータン国王にこのようにほめていただくような我が国であるのか、また、国会議員たちは顔を赤らめずにこれらの言葉を聴く資格があるのかと、しばし考え込んでしまいますね。一川氏には猛省を促したいところです。
あと余談ですが、先日、千葉総局に勤務したことのある他部の同僚記者から聞いた話です。彼は県議時代の野田佳彦首相を取材の関係で知っているのですが、そのころ野田首相は同僚にこう語っていたそうです。
「僕も学生時代は新聞記者になりたかったんですよ。(産経ではなく)朝日新聞のですけどね、ウフフ…」
なんとなく、少しだけ野田首相という人物が分かったような気になるエピソードでした。野田首相は、国会で「秘書官がマルチ会員、叔母がマルチ企業のトップリーダー」と暴露された山岡賢次国家公安委員長・消費者担当相についていまだに「適材適所」と言っていますから、一川氏にも同じことを言うのでしょうね。
まあ、世の中いろいろ、人生いろいろですからね。
杜父魚文庫
8678 一川防衛相の振る舞いとブータン国王と野田首相と… 阿比留瑠比

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