8679 中国がアメリカ衛星にサイバー攻撃 古森義久

米中関係は安全保障面で明らかに重大な転換点を迎えています。中国との関係を経済だけでしかみない日本的認識に留まっていると、この大きな潮流の変化をすっかり見逃すことにもなりそうです。
ワシントンで発表された米中関係についての年次報告を記事にまとめました。
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〔ワシントン=古森義久〕米国議会諮問機関の米中経済安保調査委員会は16日に2011年度の年次報告を発表し、中国の軍事と経済の最新動向を伝え、中国が米国を主目標に宇宙での妨害作戦を積極的に実行し始めたことを明らかにした。
同報告は中国がアジアでの有事に米軍を介入させないための「地域支配」戦略を進めていることも詳述する一方、経済面では中国の知的所有権違反や国有企業の変則の活動を批判した。 
同委員会は米中経済関係が米国の国家安全保障に及ぼす影響を主に調べて議会と政府に政策勧告をする組織で、今回の年次報告はこの一年間の調査結果を総括した。
同報告によると、中国は台湾有事などの際、米軍の主要兵力のアジアへの移動を阻む従来の「接近阻止」作戦を最近は拡大して中国側が「第一列島線」と呼ぶ南シナ海から東シナ海に及ぶ広大な地域を敏速に支配するという「地域支配」作戦の準備を始めた。
同作戦の重要な一環は米軍が依存する宇宙からの偵察や通信の機能を妨害することで、すでに中国側はその試験としてサイバー攻撃を米側の地球観測衛星ランドサット7に2007年10月と08年7月の2回、同種の衛星テラに08年6月と同年10月の2回、かけたことが判明したという。
同報告は中国が米国の軍事関連の衛星を直接にミサイルで攻撃する戦略をも進め、そのための実験を07年1月に衛星破壊ミサイルの試射で実施し、昨年1月にも運動エネルギー利用の方法で実行した、と述べている。また中国の人民解放軍が米軍の各種の施設や基地へのサイバー攻撃を組織的に実施しているという実例も報告された。
同報告によると、中国軍は「地域支配」作戦では
①技術的に優位な敵のその技術の枢要を破壊する
②先制攻撃による利点を重視する
③第一列島線内の制圧にまず全力をあげる
―ことなどを主要目標としている。
中国軍はそのためにアジアの米軍基地を射程におさめる中距離巡航ミサイルや長距離爆撃機の開発、防空能力や電子戦争能力の強化にすでに力を注いでいるという。
同報告は米中関係の経済面については両国の交流が重要であることを強調しながらも、中国経済の主体となる多数の国有企業が政府からの特別の援助や保護を受けているために、中国市場での米側企業との競争で不当に有利になっていると指摘した。
とくに中国政府への調達はそれら国有企業が優先され、米企業を不利にしているという。
同報告はまた中国側が知的所有権違反を続け、米国企業は特許や商標、意匠の権利の侵害を受けて巨額の被害をこうむっていると、強調した。
同報告はより具体的に「中国側の偽造品、模造品、海賊版商品は世界最大であり、中国国内で生産される全製品の約20%、中国のGDP(国内総生産)の8%を占める。中国側のこの種の盗用や模倣がなければ、米国内の雇用は少なくとも210万人分はすぐに増える」と指摘した。
この年次報告は中国と米中関係の現況をこのように批判的に総括し、米側の議会と政府に対応策をとることを具体的に勧告した。
杜父魚文庫

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