8695 多数の日本人医師がなぜアメリカで働くのか 古森義久

これほど数多くの日本人の医学研究者と顔を合わせたのは、人生初めての体験でした。100人を軽く越える人数、しかもそのほとんどは日本人の現役の若手医師なのです。
ワシントンの日本大使公邸でのレセプションでした。藤崎一郎大使がワシントンのすぐ近く、メリーランド州ベセスダにあるアメリカ政府の「国立衛生研究所」National Institute of Health(NIH)で働く日本人研究員を招いて催した謝恩の催しでした。
NIHといえば、医学界では世界最大、最高の基礎医学の研究所として知られています。そこにいま現在、340人もの日本人研究者がいるというのです。最近はアメリカへの日本人留学生の数が激減した、日本企業の駐在員の人数が少なくなった、というような話ばかり聞いていたので、このNIHの日本人の数には驚きました。
アメリカ広しといえども、340人という数の日本人が集まっている施設や組織は他にないでしょう。ワシントンの日本大使館でさえ、日本人の数は200人には達していません。ましてNIHの日本人はみな医師とか博士なのです。しかも日本の枢要大学出身の若手から中堅の医学者ばかりです。
なぜ日本人の医学界の若手がこれほどアメリカ政府機関に集まってくるのか。その理由を調べると、かえって日本の医学界の多様な問題点が浮かびあがってきそうです。しかしその前にアメリカの医学研究がまだまだ世界の先頭に立つことの例証だともいえそうです。
私は日本の医療制度に真剣な関心を抱き、新聞や雑誌や単行本で報告を書いた時期があります。その総括は「大学病院で母はなぜ死んだか」(中央公論社刊)という本となりました。その延長で日米の医療や医学研究の違いなどにはいまもなお深い関心があります。
そんな理由で取材を兼ねてでたこのレセプションでは多数の日本人研究者たちと話しをしました。日本の出身大学も東北大学、京都大学、東京大学、慶應大学、横浜国大などなど、多彩な人たちでした。専門分野も外科、内科、眼科、歯科、放射線科、薬学科、遺伝子研究などなど、実に広範でした。
2時間ほど、食事もあまり手をつけず、多数の人たちと懇談しました。そのことを以下に記事に書きました。
紙面の制約で、こんな集いがあったということだけしか書けませんでしたが、現場で多数の人たちから聞いた話しは貴重な内容ばかりでした。別の機会にそれらについて書ければいいな、と思っています。
<<■【外信コラム】ポトマック通信 医学交流へのねぎらい>>
日本の医学界の研究者や医師がいま国外で最大数、集まっている場所といえば、ワシントン郊外ベセスダの米国国立衛生研究所(NIH)である。
米国の保健 福祉省の管轄下にあるこの医学の基礎の研究所は世界最大級の規模で、所員は1万8千人ほど。うち約7千人が医師あるいは医学関連分野の博士号取得者とされる。そのなかにいま日本人340人ほどがいるのだという。
NIHにはこれまで30年間で5千人以上の日本人研究者が採用されてきた。
その大多数は日本の大学医学部からの3年ほどの派遣だが、直接に採用され、長年勤める日本人も少なくない。藤崎一郎駐米大使がそのNIH在籍の日本人研究者たちを、受け入れ側のNIHマイケル・ゴッテスマン副長官らとともに16日夕、公邸に招き、日米の医学 交流への努力をねぎらった。
このレセプションに出席した日本人研究者は100人ほどだったが、日本大使館がNIHの日本人研究者たちと公式に接触すること はこれまでなかったというから、おもしろい。
NIH日本人研究者会の尾里啓子会長は「日本大使からの初めての招待なのでびっくりしましたが、これまでのNIHでの日本人の活動への認知としてうれしく思いました」と語っていた。(古森義久)
杜父魚文庫

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