8755 ユーロ危機の最初の犠牲は中国ではなく、インド 宮崎正弘

通貨インド・ルピーが15%強も下落するという異常事態に遭遇。ポールソン前財務長官は6日、北京で開催された「都市開発シンポジウム」の席上、「人民元の上昇カーブは緩慢であり、これは米中の政治関係に緊張をもたらすうえ、とくに2012年は米国の大統領選挙でもあり、確実に政治問題化することはお互いに不幸である。中国経済への依存度は世界的に拡大しており、要求も要請もするわけではないが、人民元切り上げの速度を改善することが望ましい」と述べた。
しかし12月2日以来、四日連続で人民元の対ドルレートは6・35台ではりつき、しかも下落気味である。政治的に人民元上昇を期待しても、市場は逆で、人民元の下落を読んでいるからだろう。このシンポジウムはシカゴに本拠をおくポールソン研究所が共催した。
ユーロ危機の衝撃波は、インド経済を最初に襲った。通貨ルピーが下落を始めたのである。
インドは経済成長著しいが、財政が慢性的に赤字、貿易赤字も続き経常収支は赤字と深刻な状態になっている。しかし外貨準備は3000億ドルに達している。アンビバレンツな経済の様相は通貨下落により、猛烈なインフレ退治が出来ず、そのうえ欧州勢がインドから資金を引き揚げたため、突然、不況の危惧に悩まされている。
ちなみに経済成長率は6・9%、インフレ率は8・3%、失業率9・07%、為替レートは一年前が一ドル=45・4ルピー,いま52・5。つまり15%も下落している(数字はいずれも英誌『エコノミスト』、2011年12月3日号)。1インド・ルピーは日本円に直すと1円43銭。
「もし通貨下落に歯止めがかからなければインドは過去十年で最悪の経済危機に直面するだろう」(ウォールストリート・ジャーナル、12月6日)。
主因は外国人投資家の資本撤収である。手元資金確保のため欧州の投資家、とりわけ英国勢がインドの社債、株式を片っ端から売却したからである。
2010年には290億ドルの外貨がインド市場に流入したが、11年には逆に5000万ドルが去り、ことし11月だけで6億6000万ドルが流失していった。市場筋は、およそ200億ドルがインドの市場から消えていると読んでいる。
シンガポール金融筋は、このインド通貨危機は1997年のアジア通貨危機再来の懼れがある、と分析している。
杜父魚文庫

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