TPP反対派には「アメリカがTPPで日本から収奪する」ふうの対米不信、対米警戒の傾向が強いようです。しかし日本国民の圧倒的多数はアメリカに親しみを感じているという世論調査結果が出ました。その結果の記事を紹介します。
反米志向というのはやはりいまの日本ではごく少数という結論が出出ても自然でしょう。TPP論議もアメリカをどうみるかで大きく変わってくると思います。なおこの世論調査結果を踏まえて、産経新聞の高畑昭男記者が一文を書いているので、それもあわせて紹介します。
<<『トモダチ作戦』 米国に親しみ、最多82%>>
内閣府が3日発表した「外交に関する世論調査」の結果によると、米国に「親しみを感じる」と答えた人は「どちらかというと感じる」を合わせて82・0% (昨年の前回調査比2・1ポイント増)で、昭和53年の調査開始以来初めて8割を超え、最高となった。外務省は「東日本大震災での『トモダチ作戦』によ り、献身的な支援をしてくれたことが要因ではないか」と分析している。
調査は9月29~10月16日にかけ全国の成人男女3千人を対象に実施し、回収率は63・7%だった。米国に「親しみを感じない」「どちらかというと感じない」との回答は15・5%(2・9ポイント減)だった。
一方、中国に対し「親しみを感じない」「どちらかというと感じない」との回答は71・4%(6・4ポイント減)で改善された。しかし一昨年の58・5%とは開きがあり、昨年9月の沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で悪化した対中感情の回復は鈍いようだ。
日本とロシアの関係については「良好と思わない」「あまり良好と思わない」との回答が前回より4・9ポイント増え、75・8%に上った。
昨年11月のメドベージェフ大統領による北方領土訪問や日本周辺での海・空軍の示威行動など、ロシア側の対日強硬路線が影響したとみられる。
また、野田佳彦首相が交渉参加方針を表明した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に注目が集まる中、大洋州諸国と東南アジア諸国への親近感はともに約9ポイントアップした。
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<<【風を読む】論説副委員長・高畑昭男 鈍感首相の「適材適所」>>
外相と防衛相が国家の外交と安全を担う枢要ポストであるのはいうまでもない。その2大要職にど素人を据えて「適材適所」と胸を張った野田佳彦首相の感覚には、当初から強い違和感があった。
一川保夫防衛相の相次ぐ暴言、乱行に対して野党が参院問責決議案の提出を決めたのは当然としかいいようがなく、むしろ遅きに失した感すらある。理解できないのは、この期に及んでも首相が更迭を拒む発言を重ねていることだ。
内閣府が3日発表した「外交に関する世論調査」では、「米国に親しみを感じる」と答えた人が過去最高の82%を記録し、「中国に親しみを感じない」は71%にのぼった。
前者は東日本大震災の際、日米共同で行われた「トモダチ作戦」で多くの国民が「日米同盟の特別な絆を感じた」(外務省)からで、後者は尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件などで中国の本性がはっきりと透けてみえたからだろう。日露関係でも「良好とは思わない」が増えている。
いずれも、日本の安全保障環境がかつてない危機に直面する中でどの国を信頼し、どの国を警戒すべきかを国民が率直に肌で感じていることを示すデータといっていい。
にもかかわらず、外相、防衛相を含む野田政権発足後の軌跡は、日米同盟の絆を強化し、中露には厳しい現実的対処で臨む決意を十分に示しているとはとてもいい難い。
防衛相の言動は単に沖縄の信頼を無にしただけではない。日本外交の発信力を損ない、国益を日々毀損(きそん)している。米外交が本格的なアジア太平洋シフ トに転じたというのに、米軍普天間飛行場移設の遅れは同盟の足を引っ張り、米国の対日信頼を失わせるだけだ。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)問題や 中露との懸案なども山積している。
そうした全体像を見ずに、任命責任の回避や「党内融和」にこだわっているのだとすれば、為政者として国民感覚からますます乖離(かいり)し、漂流していくのではないだろうか。
杜父魚文庫
8757 反米派は孤独なのか 古森義久

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