8772 日本軍将兵の武勇と礼節も 古森義久

パールハーバー攻撃記念日でのアメリカ側の反応レポートを続けます。日本ビジネスプレスの「国際激流と日本」からの転載です。原文へのリンクは以下です。
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/32006
                =======
内容は、副題に「アメリカを変え、世界を救った31日間」とあるように、日本軍のパールハーバー攻撃の起きた12月の31日間に米国内で何が起きたかを克明に追っていた。つまり、パールハーバーの直前と直後の報告である。
米国民の多くがヨーロッパの戦争を遠い地の出来事と見て、経済の回復の兆しを感じ、リラックスさえしていた。そこに、まさに青天霹靂の日本軍奇襲 が起きた。その時、米国民がいかにとまどい、いかに傷つき、しかし、いかにすぐ態勢を立て直し、愛国心を燃やしていったか。その経緯を驚くほど客観的な視点で描いていた。
著者のシャーリー氏はベテランライターとはいえ1956年生まれ、つまりパールハーバー攻撃から15年も後に生まれている。だからこそ、詳細ながらも距離を置くスタンスが可能だったのか。
なにしろ大作なので、私はざっと目を通すだけの部分が多かったが、それでも日本が中国大陸に進出しながらも平定ができず、資源の不足に迫られ、米国との衝突コースへと突き進んでいく経緯を、日本を一方的な悪者にすることなく語っていくという姿勢が分かった。つまり「恩讐を超えて」という感じなので ある。
日本軍の武勇や礼節を讃える『太平洋の試練』
第2の書は『太平洋の試練』というタイトルだった。副題は「1941年から42年にかけての太平洋での海戦」である。著者は43歳の歴史研究者イアン・トール氏、刊行は大手のノートン社だった。
こちらの方が前述の書よりも早くウォールストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズという大手メディアで紹介され、話題の書となった。
内容は副題が示すように、日米開戦からの最初の半年、特にパールハーバーへの日本軍奇襲とミッドウェー海戦での米軍の圧勝という2大作戦に多角的な光を当てていた。この本も500ページもの大河ノンフィクションだが、読みやすく、数日、集中したら通読できた。   
同書は主眼はあくまで2大戦闘にしぼり、日米両海軍の戦略や戦術を精密に紹介している。ただし、開戦に至るまでの日本側の事情を明治時代にまでさかのぼって詳しく解説した点が米側の類似の戦記とは異なっていた。
開国以来、近代国家としての道を急速に歩まざるを得なくなった日本がロシアとの戦争に臨んだことも、ほぼ不可避の経緯のように描かれていた。
そして日露戦争での日本軍将兵の武勇や礼節を正面から讃えている。日本海海戦(対馬沖海戦)で日本の艦隊がロシアのバルチック艦隊を殲滅する模様は、特に賞賛の筆致で詳述されていた。(つづく)
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました