ついに日系工場(4500名)のストライキにも警官隊が導入され、実力排除。11日、広東省陸豊鳥炊村で五千人の農民が蜂起、警官隊と衝突する「事件」があった。日本のマスコミは一切を無視しているが、華字紙は大きく報道している。
原因は農地の立ち退き保証、不正な農地収容と幹部の腐敗、汚職への抗議行動で、農民等は手に鋤、鍬、鎌などで武装し、動員された警官隊に立ち向かった。
同村は数日前から付近の幹線道路を封鎖し、広東省の地域運送ルートを遮断するという新戦術を行使したため、中国のネット情報で注目され、同時に地域的には経済的影響がでていた。
警官隊は一千名規模。五十余発の催涙弾を打ち込み、ひるんだ農民を次々と拘束したため騒ぎはいったん収まったが、農民等は以後の話し合いを拒否し、道路封鎖は解除したものの、基本の解決には至っていない。
おりもおり同じ広東省深センでは、日立系のハードディスク生産工場で数百人の労働者が座り込みのストライキに突入、生産がストップしたため、10日に警官隊が導入され、けが人がでた。
この日系工場は日立製作所の米国子会社の中国工場「深セン海量ストレージ・プロダクツ公司」(従業員4500名)。日立はこの現地工場を売却するとしてきた。
このほか、広東省は「世界の工場」と言われる地域だけにメーカーが多く、ちょっとした噂だけで、数千の従業員がストに突入する現象が続いている。
王洋・広東省党委員会書記は、強硬な武装手段による鎮圧を避け、極力、デモ隊や抗議集会に寛大な措置を命じてきたため、労働運動側、民主派の学生、知識人からは人気がある。
王は団派のライジングスターで次期常任委員会入りが確実視されているだけに、同省で頻発するストライキの動向次第では足下をすくわれかねないだろう。
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『坂の上の雲 五つの疑問』(並木書房)
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NHKで放送されている大河ドラマ『坂の上の雲』には問題が多い。とくに原作の司馬遼太郎は歴史観、歴史資料が問題だらけ、史実とは異なるつくりごとが巧妙に挿入されている。乃木希典が愚将だったというのは、その典型で、すでに多くの指摘がある。
生前の司馬は『乱世史観』なるものを言ったが、それは史観ではなくて、基軸のない漂泊者の言い分である。基軸がぶれるのではなく、ないのである。
家永三郎は三回転向した。木下半治は四回転向した。それぞれが晩節を汚す変節と言われたが、司馬遼太郎はまだ作品の一部が売れている所為か、正面からの批判本は福井雄三氏のほかはあまり目立たない。三島由紀夫は司馬をこころからバカにしていた。
さて本書での五つの疑問とは、まず児玉源太郎が二〇三高地を陥落させたというのも史実にそぐわず、秋山好古の騎馬旅団がじつは時代遅れだったこと、東郷元帥のT字戦法は人口に膾炙された作戦ではなく、奉天会戦は中央突破ではなかった。
これらの事実をゲームのシミュレーションをやってきた若者達が、つまり先入観のまったくない歴史の素人等が、はじめて疑問と遭遇し、新鮮に驚き、ゲームの試行錯誤をつみ重ねていく裡に真実に突き当たった。
各戦場の軍の配置図、戦闘の具体的地図がこまかく配されて立体的工夫が全所に展開されヴィジュアルな仕上がりとなったのも、新世代の特徴であろうか。
杜父魚文庫
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