〔ワシントン=古森義久〕米国防長官のシンクタンクとされる国防大学国家戦略研究所は中国軍の航空機技術取得についての調査報告を11日までに作成し、中国の次世代戦闘機に必要な高度技術を米国などから違法手段で取得する工作がこんご大幅に強化されるとの見通しを明らかにした。同報告はこの違法活動は1989年から本格的に始まり、とくにこの6年間にサイバー攻撃や通常のスパイ活動での技術獲得作戦が大幅に拡大されたという。
<<中国軍が開発中の第五世代戦闘機J20>>
同国家戦略研究所(INSS)の「中国の高度軍事航空技術の追求」と題する報告は中国の戦闘機製造技術の開発や取得を1950年代にさかのぼって調べ、購入、製造、盗用という三方法をまず詳述した。同報告はそのうえで中国当局が1989年の天安門事件への国際制裁で高度軍事技術の合法取得が難しくなったことを主因として同年ごろから軍事技術や軍事汎用技術の違法取得を本格的に始めた経緯を述べている。
同報告によると、90年代後半から2005年ごろにかけて、中国はそれまでの高度軍事航空技術の提供源だったロシア、ウクライナ、イスラエルがいずれも大幅な制限を課してきたため、違法な手段での取得をとくに強化した。
その実例としては
①2004年に米国の軍事企業や軍研究所のコンピューター・ネットワークに中国山東省所在の軍と情報機関約20ヶ所からサイバー攻撃が仕かけられ、米空軍の航空計画ソフトウエアなど重要技術が盗まれた(米側ではこの攻撃を「巨大な雨」作戦と命名)
②2009年に米国軍事企業のコンピューター・ネットワークを経由するサイバー攻撃が国防総省のシステムに侵入し、第五世代(次世代)戦闘機F35のデザインや電子装置の技術の一部を取得することに成功し、この攻撃が中国の国家あるいは軍部の機関からだと認定された
―ケースがあるという。
同報告はこうした経緯を踏まえ、こんごは次世代の新鋭戦闘機J20ステルスの開発、配備を急ぐ中国軍が「サイバー攻撃と伝統的なスパイ活動という二つの方法による違法な高度軍事航空技術の取得を大幅に強化していく」という予測を打ち出した。その理由としては米国その他の西側諸国が対中軍事技術供与の禁止をさらに徹底することに加え、従来、経済的な動機から中国への兵器・軍事技術の売却が緩やかだったロシアも中国軍の戦力強化への懸念などから大幅に制限する姿勢をすでにみせており、中国としては違法な手段への依存を拡大する選択しかないことが指摘された。
杜父魚文庫
8792 戦闘機の技術は盗め! 古森義久

コメント