8799 ついに広東暴動は「反政府」の筵旗、二万人が抗議集会 宮崎正弘

中国の民衆の抗議は新しい反政府デモへ転化する転換点を迎えた。広東省仙尾市陸豊鳥炊村。九月から抗議集会が頻発してきた。
同村の農地を村書記が豊田畜産ならびに碧佳園に売却し、工業団地、別荘地などとして開発しようと画策、すでに合意が成立していた。同村は基本的に漁村だが、農業も行われており、この不動産売却交渉に農民はまったく関与していなかった。
12月8日から村人等は道路を封鎖する挙にでた。このため警官隊が出動し、抗議デモの指導者六十名が拘束された。そのなかの一人、セツ綿波(シュエジンボ)が検事に撲殺され、13日に医院で検死のあと、遺体が返却された。
この農民指導者は毛沢東を崇拝しており「土地は農民のものではないか」と訴え続けていた。当局は、この農民の死を「彼にはもともと心臓疾患があり、死因は心臓発作による」と発表した。家族が遺体のそこら中に殴られて傷だらけの惨状を訴えた。地元民の怒りが爆発した。
12月14日、当該村役場前には二万人の農民が集結し、当局を訴えた。「反政府」の旗幟鮮明となった。世界のジャーナリストが、この陸豊市へ飛んだ。当局は外国人記者の出入りを差し止めたが、村人等のツィッターによって写真が香港メディアから世界へ流れた。しかし日本のメディアはまだ詳細を報道していない。
当面の措置として市は双方から事情を聞き、村委員会書記の不正が明らかになれば、書記、副書記を免職すると発表した。
▲デベロッパーに売られた農地はウェスト・バージニア州の全面積に匹敵する
発端は言うまでもなく土地収用をめぐる汚職である。鳥炊村の土地をゴルフ場に最後は転売する目的を含めて、およそ一億元で売却、その七割を共産党幹部等が分け合った。
そして、案の定。「鳥炊村共産党委員会書記のセツ昌は、香港に三億元の豪華マンションを保有している事実が発覚した」(博訊新聞網、12月15日)。
セツの背後には北京の政治局員が保護勢力としてあり、あるいは広東書記の王洋との繋がりも指摘された。
昨今の農民暴動は参加者が数面の規模という事件も珍しくなく、原因の65%が土地をめぐる不正取引と補償金の少なさが農民の怒りを買っている。
中国社会科学院の統計に拠れば、既に1660万エーカーの農地が不動産開発業者に転売されており、その面積は米国のウェスト・バージニア州の全面積に相当する。
面妖な不動産開発で「飛び交った取引金額と農民への保証額との落差が二兆元(26兆円)もある」(ウォールストリートジャーナル、12月15日)。つまり邦貨換算26兆円が、どこかに消えたのだ。
 
かくして民衆の期待を裏切った中国共産党に反抗する農民の抗議はおさまることはないだろう。全土が社会騒擾と暴動の巷と化す日がくるとすれば、共産党独裁王朝の終焉の序曲になるかも知れない。(註 鳥炊村の「炊」は土扁。王洋の「王」はさんずい。セツは「癖」のやまいだれを草冠に)
 
杜父魚文庫

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