自民党の石原伸晃幹事長がワシントンを11日から訪問しています。14日夜の現在も滞在しているので、かなりの熱を入れた訪米のようです。
石原氏には森山裕、今津寛、小野寺五典各衆議院議員が同行しています。三人ともそれぞれ財務や外交などの政策に強い議員とされており、今回の自民党としての訪米団への真剣さをうかがわせます。
石原氏は国会で有力議員となってからも、自民党幹事長としても、ワシントン訪問は初めてのようです。
ちなみに民主党も幹事長の訪米を進めるという名目で樽床伸二幹事長代行がつい最近の11月下旬、ワシントンを訪れました。ところが聞いてみると、民主党の輿石東幹事長はまず中国を最初に訪れることを決めているというのです。同盟国よりも潜在敵対国への訪問を優先させるところは、さすが中国大好きの民主党です。
さて石原氏はアメリカの政府、議会の当局者、有力者たちと幅広く会談を続けましたが、12日にはワシントン中心部にある大手シンクタンクのハドソン研究所で英語での主要スピーチをしました。私も昼食会を兼ねたこのスピーチを聞きにいきました。
この演説では石原氏は日本の安全保障への中国の影響を懸念や警戒の対象としてはっきり語り、そのためには日米同盟の強化をはじめとして、堅固な防衛策をとるという方針を明言しました。中国への確実な抑止政策ともいえましょう。
会場にはアメリカ側の政府や議会、軍部などのアジアや日本の関係者が多数、出席し、質問も多数、出ました。石原氏は英語での主要スピーチはこれが初めてだと述べていましたが、なかなかの活力にあふれ、スムーズで、わかりやすい英語で聴衆に耳を傾けさせていました。山のように出た質問に石原氏は丁重かつ詳細に答え、質疑応答の時間がすごく長くなりました。
石原氏の質疑応答を含めての発言は以下のようでした。
▽日本は中国に対し、アメリカとも連携し、中国を国際社会、国際秩序に招きいれようとする態度をとったが、中国が軍事費を大幅に増やし、攻撃的な言動をますます強めるようになったため、警戒が必要になってきた。
▽中国は南シナ海や東シナ海でとくに空母を登場させたりして、軍事態勢を強め、海洋制覇や領有権拡大を目指す姿勢を明らかにしてきた。いまでは第一列島線から第二列島線までの海域の支配権を強め、自然資源の獲得の意図を露骨にしてきた。
▽日本としては中国の尖閣諸島への攻勢に対応して、尖閣をいまの私有から国有の土地にして、自衛隊の部隊を恒常的に駐留させるべきだ。中国が国内法を根拠に公海での権利を拡大することには公海での航行の自由の阻害としてアメリカのクリントン国務長官も警告したが、日本も同調する・
▽中国の軍事的な動きに対し、日本は平和と安定のために、日米同盟を強化すべきだ。日本の防衛費も増やさねばならない。同盟の効果を高めるためには日米安保条約の(双務性に向けての)改定や憲法改正をも視野に入れていきたい。
▽台湾や中国に近い石垣島にも地元の選挙で16年ぶりに自民党候補が勝ったため、海上自衛隊の艦船が寄港できるようになった。この寄港は対中抑止としても意味を持つ。
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ざっとこんな骨子ですが、日米同盟の堅持という表現でくくれる一連の発言だといえるでしょう。
ただしいまの自民党だと、たとえ幹事長がこれほどまとまな政策発言をしても、谷垣総裁や党内左派や親中派はどうなのか、と問わざるをえません。自民党内でも防衛政策や対中政策をめぐっては意見の分かれがなお激しいと思われるからです。
しかし石原幹事長はいかにも対米協調を党の基盤としてきた自民党の領袖らしい発言をしたといえます。
発言は本体の演説は英語、質疑応答は日本語で、通訳つきでした。ただし石原氏の弾むような活力の発言を英語にした日本人通訳は、どうもテンポがゆっくりで、あくまで女性っぽくひびき、本来の発言にあるダイナミックさがアメリカ側の聴衆に十分に伝わらなかった危険を感じました。
杜父魚文庫
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