北朝鮮の金正日総書記が小泉首相訪朝の際になぜ突然、日本人拉致を認めたのか。新しい情報、あるいは見解が明らかにされました。
小泉首相に同行していた安倍晋三官房副長官(当時)の言動がカギだったというのです。「救う会」のニュースを転載させていただきます。この記録では安倍氏の役割についての言及は資料の最終部分に出てきます。
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以下は、12月10日に、家族会・救う会・拉致議連の主催で実施された国際セミナー「拉致被害者はなぜ生きていると言えるのか」の中の、「小泉総理の北朝鮮訪問前後の北朝鮮の状況」というタイトルの張哲賢氏の発表論文です。
小泉訪朝時、北朝鮮は拉致を認める予定ではなかったが、安倍晋三官房副長官と思われる人物が、午前の会談後の休憩中に、北朝鮮政権の公開謝罪の拒否に強く抗議して首脳会談中断を強力に要求しているという内容の盗聴資料を北側が入手し金正日に上げたため、金正日が午後の会談で、即興的な決心で拉致犯罪を認めたことなど、我々が初めて知る様々な報告が含まれています。
当日はさらに詳しい説明がありましたが、テープ起こし後に掲載予定です。また、事前に発表論文をもらっていたものは明日以降順次掲載します。
■「小泉総理の北朝鮮訪問前後の北朝鮮の状況」張哲賢氏発表論文-国際セミナー
2011.12.10国際セミナー報告 小泉総理の北朝鮮訪問前後の北朝鮮の状況
張 哲賢(元北朝鮮統一戦線部幹部)
1 小泉総理の北朝鮮訪問に対する日本と北朝鮮の目的.北朝鮮の目的
・日本から過去の謝罪と植民地賠償を受け取れるようにする政治、外交的契機と転換点を準備しようとした。・小泉総理の北朝鮮訪問を両国の政治外交的成果として浮上させることにより、北朝鮮が政権次元で敢行した拉致犯罪を縮小しようとした。
・国交正常化とともに日本が提供する莫大な外貨で、北朝鮮の経済難を回復しようとした。
・日本との国交正常化を成功させて北朝鮮は自主的、独立国としての権威と地位を対外的に誇示しようとした。
・日本国内の朝鮮総連の地位と権威を強化しようとした。
・米国と韓国内の反北勢力を孤立させる一方、融和的対話を引き出すための国際的環境を作ろうという意図であった。
統一戦線部が分析した日本の目的
・内外の悪材料に直面した小泉内閣が支持率反転の突破口を拉致問題解決に見いだそうとしたのではないか。・拉致問題において、具体的提案よりも政権次元の謝罪と反省を受けることに注力して小泉内閣の支持率反転の契機に活用しようとしたのではないか。
・日本の最敵対国である北朝鮮政権を大胆に包容することで日本の国連安保理常任理事国への進出のための国際環境を有利にしようとしたのではないか。
・反日感情が濃厚な韓国を刺激するための北朝鮮を抱擁する戦略ではないか。
・ミサイル発射試験のような北朝鮮の軍事的行動に対して警告を与えようとしたのではないか。
2 首脳会談における日本と北朝鮮の立場の比較
日本と北朝鮮との初期の立場の比較
・北朝鮮は国交正常化、植民地賠償金支払いを前提とする拉致交渉および首脳会談を提案した。
・日本は拉致問題解決を前提とする首脳会談と経済支援を提案した。
・北朝鮮は日本の過去謝罪とその延長線での植民地賠償金支払いに関する公開宣言を提案した。
・日本は過去謝罪は可能だが賠償金支払いでなく国交正常化名目の経済支援を約束した。
・北朝鮮は拉致問題に対する個別の関係機関の反省と謝罪、処罰は可能だが政権次元の公式的立場の発表は許さなかった。
・日本は過去への公開謝罪と北朝鮮政権の拉致犯罪への公開謝罪を交換する形の両国の同時反省を提案した。・北朝鮮は国交正常化および過去賠償金支払い履行と監視のために、北朝鮮・日本駐在共同事務室の開設を要求した。
・日本は拉致の生存者の全員送還とその円満な解決のための日本・北朝鮮共同拉致事務室の開設を要求した。・北朝鮮は現金中心の経済支援を要求した。
・日本は物資中心の経済支援にこだわった。
日本と北朝鮮の立場の変化の比較
・北朝鮮は拉致問題に対して政権次元でない形式での謝罪と反省を検討するといった。
・日本は公開的な拉致認定と謝罪以後の経済支援を約束するといった。
・北朝鮮は植民地統治過程に資源収奪、人材収奪、それに対する物質的、精神的損害賠償まで含んで400億ドル規模の経済支援を要求した。
・日本は拉致問題解決のため北朝鮮政権が誠意ある努力と反省を見せる条件で日本政府が最大可能な範囲内での経済支援を約束した。
・北朝鮮は日本国内朝鮮総連メンバーの自由往来解決とその手続き簡素化を要求した。
・日本は拉致された日本人の安全と早急な送還を要求した。
実務会談過程でのエピソード
・日本はめぐみ問題、拉致被害者身元確認要求など初めは具体的提案をしたが、北朝鮮が拉致問題という大きいタイトルの会談に固執するとすぐに目に見える成果のために譲歩した。
・北朝鮮側は政権次元の犯罪を否定して拉致に介入した個別の関係機関の謝罪と反省を公開、または非公開でするとし、これさえ拒否する場合、会談を決裂させると脅迫した。
・しかし当時統一戦線部をはじめとする対南工作機関は、部分的認定も認定だとして金正日の権威と連係させて外務省の実務交渉での発言自体を深刻に問題にした。
・賠償金400億ドルの根拠として北朝鮮が植民地統治期間の収奪金額とその利子を計算した結果だとするや、日本側は発電所、製鉄所、鉄道など植民地産業施設を北朝鮮が今まで無断で使った費用を支払えと正面から対抗した。
・結局、国交正常化以後の日本の経済支援金額を114億ドルとして暫定的合意をし、北朝鮮はこのような首脳会談の代価金額を金正日に報告した。
・しかし、統戦部は(2000年6月の金大中・金正日による)6.15南北首脳会談の代価を先に受け取った実績と比較して外務省の交渉結果を低く評価した。
・北朝鮮側は小泉北朝鮮訪問の時期を8月と要求したが、これは日本と北朝鮮との首脳会談を今後「第2の8.15敗戦」として宣伝しようとする政治的意図であった。
・北朝鮮の現金支援要求後に日本側は現金支援をする場合、独裁国家および核開発支援の検証で米国が介入する名分を与えるとし物資支援の必要性と展望を北朝鮮に説明した。
・また、日本は過去謝罪と植民地賠償名目の現金支援は韓国をはじめとする他のアジア国家の再交渉要求につながりうる事案だと説明した。
実務会談以後の北朝鮮状況
・金正日の指示で社会科学院、人民経済大学などの経済機関により114億ドル規模の経済支援金で北朝鮮経済を再建するため多様なプロジェクトが企画された。
・特に経済再建では現在の単線を全国複線とする鉄道現代化が核心となった。
・金慶喜軽工業部長が主管することになる日本商品に対する期待も大きかった。
・日本の経済支援により北朝鮮は拡大生産的な輸出経済建設よりも自給自足の経済基盤構築に一層力を注いだ。
・そして国家計画委員会では日本が供給する経済支援金を各分野に分配する計画をすでに作成していた。
・日本政府を圧迫する目的で新聞、放送、講演らを通じて日本の過去植民地統治期間の被害を集中的に浮上させる対日心理戦を展開した。
・しかし、統戦部をはじめとする対南工作機関は拉致を主題とする交渉自体が望ましくないとして今後展開する国際的影響を非常に憂慮した。
小泉北朝鮮訪問以後北朝鮮状況 シナリオになかった金正日の拉致認定
・北朝鮮政権は自分たちの独裁習性の通り、日本内閣の最高権力者の小泉総理の北朝鮮訪問を成功させることを最優先目標であり成果として認識した。
・しかし首脳会談は初めから政権次元の拉致公開謝罪と反省を前提とする外交自尊心の戦いになった。
***・金正日をより一層当惑させたのは小泉総理一行中の一部が、宿舎で北朝鮮政権の公開謝罪の拒否に強く抗議して首脳会談中断を強力に要求しているという内容の盗聴資料を入手したためだった。
・そして休息後に再び開始された首脳会談の席で金正日は即興的な決心で拉致犯罪を認めたが、このような北朝鮮の公開謝罪は突発的に起きた結果だった。
・日本は金正日の決断力を評価してそれに対する見返りとして実務会談で合意した国交正常化と114億ドルの経済支援を繰り返し約束した。(つづく)
杜父魚文庫
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