本日、自民党の石破茂前政調会長と新藤義孝衆院議員が首相官邸と外務省をそれぞれ訪れ、藤村修官房長官と玄葉光一郎外相に、自民党の「領土に関する特命委員会」による「日韓首脳会談に関する決議」を手渡しました。決議の内容は以下の通りです。
《本日(14日)午前、韓国ソウルの日本大使館前に「いわゆる慰安婦」の銅像と石碑が設置された。この問題については、わが党においてもたびたび政府に対し、「外交努力により建設を中止するよう働きかけよ」と指摘をし続けてきた。しかし、今週末に李大統領が来日する直前に、韓国側は設置を強行した。誠に遺憾であり、日韓関係に非常に悪い影響を与えることを憂慮するものである。
政権交代以降、日本外交は、韓国に過剰に配慮するあまり、あまりに一方的でエスカレートするばかりの韓国側の行動を抑えることができない状態となっている。竹島問題をとってみても、閣僚・国会議員の上陸、新たな施設建設、防波堤建設、海洋科学基地建設、海洋調査計画、ファッションショーやコンサートの開催等、枚挙のいとまがない程の既成事実が積み重ねられようとしている。
これら韓国側の一連の行動は、わが国国民の心情を逆なでするものであり、「未来志向の日韓関係」の進展を著しく阻害する行為である。
前述したように、今週末、李大統領が来日して、日韓首脳会談が開催される。この場において、野田総理がどのような対応を取るか、国民の注目が集まるのは必至である。よって政府に対し下記の点を申し入れる。
記
1・今週末の日韓首脳会談においては、野田総理には毅然とした態度で、いわゆる慰安婦の像及び石碑建設に対する抗議及び撤去の申し入れを行うこと。
2・首脳会談では、併せて竹島に関する新たな計画や施設建設及び周辺海域での海洋調査等、韓国側の一連の行動に関し、強く抗議するとともに中止を申し入れ、この問題に関する日本政府と韓国政府の協議の場を設置するよう強く求めること。
3・外務大臣は、日韓首脳会談の前に一連の件につき韓国側に抗議を行い、その結果と事実関係の経緯を記者会見等で国民に公表すること。以上、決議する。》
……至極もっともな要請であると思います。石破氏と新藤氏によると、これに対し、藤村氏は「総理に間違いなく伝える」と答え、玄葉氏は「よく考えてどういう対応をとるのか検討する」と回答したとのことでした。これを野田佳彦首相と玄葉氏がどう判断するか、ここは注視しておかないといけませんね。
で、私は石破氏らが外務省に来た際にぶらさがったのですが、石破氏は記者団にこんなことを語っていました。
石破氏 ソウルの日本大使館前に設置されたいわゆる慰安婦の像は、ウィーン条約(第22条で、「加盟国は自国内の外国公館の安寧の妨害や威厳の侵害を防止する措置を取る義務を負う」と定める)違反のものであり、日本として撤去を強く申し入れるべきだ。
今週末の日韓首脳会談で、野田首相から、わが国の尊厳を傷つけられているのだから、強く抗議と撤去を申し入れろと言った。しかも像は無許可だという。法治国家として適切な措置を取るよう、わが国の最高責任者である首相に言ってもらいたい。そうしないと既成事実化してしまう。
玄派氏からは「よく考える」とのことだった。真摯な対応ではあった。
その上で、新藤氏はこう補足しました。
新藤氏 これだけ屈辱的な行為を受けて、首脳会談で何ら反応しないとなると、それは韓国側の行為を受け入れることになる。外相が記者会見して国民にコメントを出すべきだ。そして首相が、大統領にはっきりと抗議して撤去を申し入れるべきだ。これに反応しなかったら、完全に韓国に誤ったメッセージを送ることになる。それは韓国にとっても不幸なことだ。
玄派氏は「よく考えてどういう対応を取るのか検討する」と述べていた。
……まあ、野田首相の10月の訪韓時には、来年で任期が切れる李大統領はすでに政治的に「死に体」と言われていたわけで、その李大統領が比較的対日穏健派だということで、李大統領のうちに関係改善を進めようと焦って朝鮮王室儀軌の贈呈などいろいろとサービスしたあげく、この仕打ちだと。
私は以前、ある外交官に、「仮に李氏がふだんは反日的言動をとらない比較的まともな相手だとしても、もうすぐ消える大統領にいくらサービスしてもあまり効果はないのではないか」と聞いたところ、彼は「もうすぐ消えるからこそ、次の大統領になっても後戻りできないように今のうちに進められるところは進めておくんだ」と述べました。
まあ確かに、李氏が前任者の盧武鉉氏に比べればはるかにマシであることは確かですし、その言い分は分からないでもないのですが、結局、李氏にしたところで韓国のマスコミ主導の反日世論には逆らえないわけで。しかも、ソウル発の共同電によると、李氏側から日韓首脳会談で慰安婦問題を取り上げると韓国政府当局者は述べているそうです。
これはもちろん、日本側の主張に耳を傾けるという意味ではなくて、韓国側がすでに日韓基本条約とそれに伴う協定で「完全かつ最終的に」解決済みである賠償問題を再び持ち出すという意味でしょうね。さて、野田首相はどんな態度で臨むのか。まあ、首脳会談はふたを開けてみるまでどうなるか分かりませんが。いずれにしろ、注目です。
杜父魚文庫
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