8811 横田めぐみさん「死亡」説のウソ 古森義久

北朝鮮に拉致されたままの横田めぐみさんが死亡したとする北朝鮮当局の発表がいかに矛盾や虚構に満ちているか、北朝鮮から亡命してきた労働党の内情に詳しい人物が発表した論文で詳述しています。
めぐみさんは生きている、としか思えない指摘の数々です。
北朝鮮の発表の虚構はすでにさんざん指摘されてきましたが、今回の論文はこれまで私の知る限り、最も詳しく、最も具体的で、最も説得力があるようです。「救う会」の発表を紹介させていただきます。
                  =======
以下は、12月10日に、家族会・救う会・拉致議連の主催で実施された国際セミナー「拉致被害者はなぜ生きていると言えるのか」の中の、「小泉総理の北朝鮮訪問前後の北朝鮮の状況」というタイトルの張哲賢氏の発表論文です。
                  =====
北朝鮮人の視点で見ためぐみ死亡の疑問点
第一に、めぐみが49号予防院に入院したというその最初の設定から疑問だ。
・めぐみは党対南工作機関が管理する外国人なのに、北朝鮮の全国一般の人たちを相手にする49号予防院に入院させるということはすなわち秘密管理をあきらめたのと同じだ。
・しかもめぐみそれだけでなく夫の金英男(キム・ヨンナム)も韓国出身拉致被害者で、現職が対南工作機関要員なので平時の生活も社会と隔離させていた点を勘案する時、49号予防院入院はとうてい有り得ないことだ。
・すなわち北朝鮮の主張が説得力を持とうとするなら49号予防院でなく党対南工作機関要員とその家族の治療を専門に担当する915病院にならなければならない。
・めぐみは自分と境遇が似た韓国人金英男と結婚して心理、情緒的共有が可能だったし、特に息子でもなく娘を持ったことにより母性愛により一層強いお母さんになったと推定できる。
二番目に:北朝鮮が主張するめぐみ死亡確認書の疑問点だ。
・死亡確認書があるならば以前に必ず患者の診療記録も存在するはずだが、その診療記録には家族関係、血液型、疾患経歴、再発経歴、はなはだしくは「家族親戚中で似た病気を病んだ人がいるのか?」という質問など具体的な記録が明記さ
れている。
・北朝鮮が診療記録は提示できないまま死亡確認書だけを根拠資料として主張する理由は49号予防院の入院記録がないという反証であるわけだ。
・また、死亡確認書を見れば“リュ・ミョンスク”の死亡日と死亡確認書作成日が1993年3月13日ですべて同じな点も疑問だ。
・生命保険という言葉自体がない北朝鮮で死亡確認書というのは家族に与える文書でなく、病院と住民登録機関の間に、あるいは病院と死亡者該当党委員会の間で行き来する死亡確認文書のことだけだ。
・死亡確認書は上部に報告するために、毎月病院で死亡者名簿を整理する時、または、親戚の人事手続き過程で党委員会が人物空白確認を行う次元で死亡確認書を要求する時に別途に発給してくれる。
・交通、通信など業務環境が劣悪で職員の業務参加度が慢性的な疲労感が拡散している北朝鮮で、死亡当日に死亡確認書を発給するほどの迅速な業務処理は特別な目的なしではあり得ない。
・北朝鮮が提出した死亡確認書が死亡日と作成日が同じ点は人為的にでっちあげられた証拠であることを明確に証明するわけだ。
三番目に:北朝鮮が主張するめぐみ遺骨管理の疑問点だ。
・めぐみの死体を初めは病院後方の山に埋めたという北朝鮮の主張は、病院周辺に墓を作ることはできない北朝鮮環境衛生法に違反する不法行為だ。
・しかも北朝鮮は全国が国有地で、たいがいの山も農耕地に使うから墓地管理規則によって個人がむやみに墓地を作ることができないように厳格に統制されている。
・そして各機関ごとに職員が死亡した場合、死体を埋葬する機関墓地区域が分けられているので、めぐみが本当に死亡したとすれば党対南工作機関の墓地区域として指定された順安区域に安置されてこそ正常だ。
・後日に夫の金英男が遺骨を移したという北朝鮮の主張は、人を二回埋めれば二回殺すと考える北朝鮮の一般的通念上、有り得ないことだ。
・北朝鮮には火葬場がせいぜい二ヶ所しかないから幹部も順番待ちをしてやっと火葬できるところ、夫、金英男氏の権限で死体でもない遺骨を自分の都合で火葬することはできない。
・金正日神格化国家の北朝鮮では個人偶像化も、はなはだしくは家族主義も許容されないから遺骨を家に保管することは絶対無い。
首脳会談の雰囲気から見ためぐみ生存の可能性
最初に:めぐみ自殺発表準備が全くならない点が疑わしい。
・めぐみが本当に1994年に自殺したとすれば、その間の時間と確実な根拠を土台にして、北朝鮮は事前に送還対象、あるいは死亡者発表対象に分離して、より戦略的な会談を推進しただろう。
・だが、北朝鮮は拉致問題をただ外形的交渉としてだけ扱い、公開謝罪に対する政治的躊躇、100億ドル経済支援という経済的実益にだけ執念したが、これは交渉の準備、すなわち事前にめぐみ自殺を確認するという準備をしなかったという反証だ。
・一言で交渉とめぐみ自殺との関係、公式的なめぐみ自殺の発表前後の政治的影響力を全く計算しなかったことは、北朝鮮の交渉水準と技術に比べると非常に意外な失敗だ。
第二に:北朝鮮の性急なめぐみ自殺発表に比べて、非常にお粗末な根拠提示が疑問だ。
・拉致会談は外務省が主導したが、拉致被害者の管理は党対南工作機関の所管である。しかし、部署間の戦略的協議と共助が適時になされず、組織利己主義と牽制が作用した結果と見なければならない。
・すなわち、党対南工作部がめぐみ死亡を主張し、それを受けて被害者への接近が不可能な外務省が不充分な証拠をでっちあげたと見なければならない。
・拉致犯罪の責任から自由でない党対南工作機関は、対日主導権と交渉権限を外務省から引き継ぐために、秘密保安を名目にして外務省を圧迫したと見なければならない。
・実際に、首脳会談と実務会談の過程で外務省の交渉権限は政治、経済にだけ限定されており、主要協議案件である拉致の内容は党対南工作機関所管であり、外務省としては忌避するほかはない状況だった。
三番目:金正日の公開謝罪にめぐみのお母さんに対する謝罪がなかった点が疑問だ。
・北朝鮮の主張の通り、めぐみを含んだ何人かの拉致被害者日本人が北朝鮮で死亡したとすれば、その後日への悪影響を考えても金正日は最高人民会議常任委員長、あるいは軍関係者を前に出すはずで、あえて「神格化」されている自分の口で公開謝罪をしなかっただろう。
・金正日の公開謝罪には拉致犯罪に対する謝罪と反省だけがあっただけで、死亡者に対する同情と具体的言及はなかった。
・米国には嘘も論理的ならば通じる、日本には感情に訴える外交が効果的だ、といつも話していた金正日であったため、もしめぐみの自殺が確実ならば日本国民の感情を変える、感情に訴える政治を試みたはずだが、そのような努力が全くなかった。
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました