今回の世界を駆けめぐり、世界を震撼させた感のあった金正日急逝の報道で見せた野田内閣と民主党の態勢の不備は、醜態だった。だが、長年反対するだけの野党暮らしを続け、世界の潮流に遅れた労組の支持で成り立っていた感が深い政党とその閣僚では仕方がなかったか。
野田総理にしても閣僚にしても、また党内に残っている幹部にしても、我が国と欧米人(敢えて白人という表現を避けただけだが)の国との政治・経済・外交面での文化の違いを知る機会がないままに政権を取ってしまったのだから、その面での準備が皆無に近い。
しかも、言うに事欠いて「政治主導」で彼らとは比較にならない経験と知識を持つ官僚排除をしてしまった。野田以前の二人の総理を見ていても、欧米人の厭らしさを全く認識せずにナイーヴに外交をやってしまった。その成果?が今回の入手すべき情報を獲得する態勢が整っていなかった一因となって現れた。
くどいようだが、欧米人の特色を挙げおこう。先ずは「執念深いこと」。パレスチナ対イスラエルの争いは何千年もの歴史があり、未だに続いている。アメリカの懸命の仲介で一旦は止まっても、直ぐまた揉め事が起きるという具合だ。彼は簡単に水に流したりはしない連中であるのだ。
次は、我が国内に止まっていただけでは(菅前総理や野田総理を言うが)、彼らの世界に厳然として存在する「階級」の存在である。アメリカには貴族はいないではないかなどと言うな。
それに相当する生まれながらにして人の上に立つ資格と権利を与えられているとしか思えない層がある。彼らには“class”という言葉がある。
年間に授業料他で最低でも5万ドルを要する私立大学を出た者が、“スピード・トラック”に乗って若くして出世して大企業でも政治の世界でも上に立つシステムが構築されている国である。年功序列はない国だ。言って置くが勿論例外はある。
その世界にいれば場面毎で着る物にも煩い(厳しい)規範があるし、社交性も要求される。さらに早くから帝王学的なことを仕込まれているので、上の地位に到達した瞬間に昨日から指導者だったかと思わせるような台詞がドンドン言えるように準備が出来ている。
また、当方も何度も騙されたような、極め付きの美辞麗句を並べた社交辞令が上手いのは脅威(驚異?)だった。良くもそこまで言えるなと思うような、簡単に言えばお世辞が上手く、人を煽て上げて心地良くさせるものである。
迂闊に真に受けて図に乗ろうものならば、大失態を演じてしまいかねない怖さがあると思っていなければならない「社交辞令の外交の世界」がある。
「こういう人たちが集まり、利害を計算して群れを為すなり離れたりを繰り返して、自己と自国の利益の最大化を図っている世界が欧米人の諸国である」。
自民党は55年体制から政権を失うまでの間に、その欧米人の世界を一応は経験してきたし、外務省を政治主導でご指導などしなかった。
だから、現野田政権よりは上手に諸外国との交際が出来ていただろうし、情報のルートもパイプもあっただろうし、国益を損ねない外交を民主党よりは遙かにそつなくこなしていた。
民主党には一旦事あれば、自民党時代のパイプを活かそうという度量があっただろうか。あれば、今回の醜態はなかったのではないか。
北朝鮮の指導層の再構築の成否次第と中国の出方如何で、全世界でなければ我が国を含めたアジアの近隣諸国を巻き込んだ混乱が生ずること(危険性?)もあるだろう。
その際に、末期的症状の李明博大統領相手にあれだけの弱体振りを見せた野田総理は、今からでも「国際情勢」どころか「外国とは何か」を外務省に教えを乞うて準備態勢を整えておいた方が良いだろう。
万が一にも北朝鮮から難民が、南米からアメリカに不法移民が殺到しつつあるような形で押し寄せたらどう対処するかくらいを、泥縄式に勉強しておいて貰いたいものだ。
さもなければ、”Better late than never”の原則で、会議の出席ではなく単独で欧米の諸国でも巡回して社交辞令のシャワーでも浴びてきたら如何か。ま、「遅かりし、由良の助」だろうが。何れにせよ、彼らの真意が那辺にあるかを見抜く目を養ったらどうか。何処の誰が「巧言令色鮮し仁」かを学んで貰いたい。
杜父魚文庫
8828 世界を知らぬ民主党 前田正晶

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