金正恩とはどんな人物なのか。その政権はどんな体質となり、どんな対外姿勢をとるのか。アメリカ側の見方の紹介です。
<<異様な独裁に突き進む可能性も>>
米国が注目する第3の点は、金正恩氏が新最高リーダーとしてどのような対外政策をとるか、である。北朝鮮は最近、韓国の哨戒艇を撃沈し、韓国領の島に砲撃を加えるなど、危険な軍事挑発を繰り返してきた。その一方で米国に対しては食糧援助と引き換えに核問題での6カ国協議に応じるような軟化の兆しをも見せてきたという。
こうした北朝鮮の錯綜した対外政策は、今後、金正恩政権下ではどうなるのだろうか。米国側の関心は当然ながらきわめて強い。
その点についてヘリテージ財団の朝鮮問題の専門家ブルース・クリングナー氏は以下のような見解を発表した。同氏はCIA(中央情報局)で長年、朝鮮問題を担当したベテラン研究者である。
「金正恩氏は、当面は父や祖父が採った政策の基本を忠実に継承しようと努めざるを得ないだろう。その政策とは、異様なほどの独裁の下でのナショナリズムの高揚と軍事重視が主体となる。軍事面では核兵器保有が主要目的となる。
一方、正恩氏はスイスで教育を受けたことや若いことから、なにか新しい改革や刷新の発想を持っているだろうという観測もある。
しかし、最高指導者としての地歩を固めるには、軍部と労働党の首脳にまず依存しなければならない。軍や党の首脳は当然、現状維持の守旧派だ。正恩氏は守旧派の意向に沿うだけでなく、そこからの強い支持を得るために、米国や韓国のような『外部の脅威』に対して、これまでよりも強硬に立ち向かう行動を 誇示するかもしれない。
だが、いずれにしても当面は父親の喪に服し、政権移譲を円滑に終えるために、外交活動を事実上、凍結する公算が大きい」
以上のように見てくると、米国側の今の北朝鮮への視点は大枠が明らかになると言えよう。米国はこれらの諸点の他にも、例えば、中国が北朝鮮の新体制に対してどのような態度を取るかについても、真剣なまなざしを向けている。
こうした激動と混迷の中で、わが日本は北朝鮮の新たな動向をどのように見て、どのように対応すべきだろうか。
杜父魚文庫
8832 正恩政権は「外部の脅威」に強硬に 古森義久

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